2019年11月28日、京都市に本社を置く電子部品メーカーのローム株式会社〈6963〉が、車載や産業機器で使用するモータ、電源回路の電流検出用途に最適な、5.0×2.5mmの小型サイズで業界最高(ローム調べ)の定格電力4W を実現したシャント抵抗器「GMR50」を発表。抵抗器の世界シェア3位を誇るロームの最新技術に早くも注目が集まっている。
一般的には目にふれたり、耳にする機会も少ない「シャント抵抗器」とは一体、どんなものだろうか。
まず、抵抗器は電子回路を適正に動作させるために電流の流れを制限したり、必要に応じて調整する、あらゆる電子回路に欠かせない部品だ。中でもシャント抵抗器は、「脇へそらす」「回避する」あるいは「分流する」という意味を持つ「シャント (Shunt)」という言葉通り、電流を分流させて電流計の測定範囲を拡大し、回路に流れる全電流を測定するために用いられる抵抗器をいう。近年、我々の生活の様々な分野で電子化、電装化、自動化が進んでおり、それに伴って抵抗器の需要も増している。
しかし、ここでいくつかの課題が持ち上がる。電子部品が必要となる全ての場面で、最も優先されるべきことは「安全性」だ。いくら便利であっても、安全性が低いようなものは使用できない。とくに車載部品などは、直接人命にかかわるものだから尚更だ。回路の電流を検出する役割をもつシャント抵抗器の場合、検出対象故障などにより抵抗器に大電流が流れた場合でも、安定して電流を検出できることが求められている。
もうひとつの課題は、小型化だ。車載部品においては、車一台分という搭載スペースが限定されているにもかかわらず、自動車の高機能化に伴って、モータやECUの搭載数が増加している。当然、それらに付随する搭載部品点数も急激に増えている。つまり、部品の一つ一つをいかに省スペースに納められるかが重要になってくる。しかも、高性能なものになればなるほど高電力になるので、それに耐えうるものでなければならないし、車載や産業機器分野においては厳しい温度保証も要求される。抵抗器も例外ではない。ますます厳しくなる使用環境の中で、「優れた耐久性」と「小型化」をともに実現し、高精度かつ安定した電流を検出しなければならないのだ。
今回、ロームが開発に成功したシャント抵抗器「GMR50」は、電極構造の見直しと素子設計の最適化によって基板への放熱性を大幅に向上することに成功し、4W 定格電力の一般品と比べてワンサイズ小型、実装面積で39%もの削減を達成している。また、抵抗体金属に高機能合金材料を採用することで過電流負荷に対する耐久性も高めており、過酷な環境下や 定格電力を超える想定外の負荷がかかった場合でも安定した電流検出精度を保つことができるという。
簡単に言えば「大電流でも安定した電流検出ができる超小型のシャント抵抗器」なのだ。
そもそも、ROHM(ローム)という社名は、抵抗を表す「R」と、抵抗を示す単位である「Ohm」からなるもので、創業製品である抵抗器に由来している。それだけに、同社の抵抗器に対する思い入れとこだわりには、並々ならぬものがあるのだろう。同社では車載市場の成長を見越して、日本国内のみならず、フィリピンやタイ、マレーシアなどに生産拠点となる新棟を次々と建設し、生産設備の刷新、供給能力向上を図っている。抵抗器の世界シェアの順位が塗り替わる日も近いかもしれない。(編集担当:藤原伊織)