3年前から「金銭を賭けて」月2~3回にわたり産経新聞記者宅で賭けマージャンしていたという東京高検の黒川弘務前検事長。人事院規則では賭けマージャンを常習的にしていた場合「停職」だが、なぜか「訓告」にとどまった。
安倍晋三総理の国会答弁(22日の衆院厚労委員会)では「訓告」にしたのは「稲田伸夫検事総長が事案の内容、諸般の事情を考慮し処分を行った」ものという。
稲田検事総長には「諸般の事情」とは何を考慮してのものなのか、国民の前に説明を願いたいものだ。最も高い倫理観、モラルが求められるポストの検事長にあって事案内容(賭けマージャン)は、あってはならないもの。「訓告」で許されるはずがない。国民感覚からはかなり外れた判断としか言えない。
自民党の石破茂元幹事長も22日のコラムで「賭博罪(刑法第185条)、賭博をした者は50万円以下の罰金又は科料に処す。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」ことを紹介。
「一時の娯楽に供する物とは、その場で飲食する飲食物、煙草などが挙げられます。金銭はその多寡にかかわらず許されないとされています(大審院判例・大正13年2月9日)」と掲載。
「常習賭博罪(刑法第186条第1項)」についても「常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処す。賭博の常習者とは、賭博行為を反復・継続して行う習癖を有する者をいい、刑法典の中で唯一の常習犯規定であり、身分犯です」と紹介。
そのうえで「黒川氏が『常習者』に該当するかどうかはわかりませんが、報道が仮に事実とすれば少なくとも単純賭博罪に当たることは間違いないでしょう」と指摘。
「非公式な『訓告』(訓告が3回続くと戒告相当となる)で済むというのはどういう判断基準に基づくものなのか、私にはよく理解が出来ません」と強い疑問符をつける。多くの世論は共鳴するだろう。
石破氏は「黒川氏が定年延長されたのは、黒川氏がいなくては進まない捜査案件があったから、ということだったはずで、今回の辞任によってそれは一体どうなるのでしょう」との疑問も提起した。
「捜査は進まず、国民にとって大きな不利益が生ずることになるはずなのですが、そのリスクはどのようにして回避されるのか。黒川氏がいなくとも捜査は進展するというのなら、何故定年は延長されたのか。」
そして「安倍総理は先週、『検察庁法の改正は全て法務省の考えであって、官邸は全く関与していない』と述べられました。であるならば法務省は、昨年秋の検察庁法改正案には全く入っていなかった『公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として、内閣が定める事由があると認めるとき』との規定をなぜ突然、今回の改正案に入れたのか。明確に説明する責任があります。」言われる通り、法務大臣には理由を明確に説明する責任がある。
訓告処分で、黒川氏には満額の退職金(約7000万円)が支払われる。一方、「官邸の門番」と揶揄される同人の検事総長が消滅したことは、要因は別とし、多くの国民が一定安堵したのではないか。
ただ、法解釈を歪めてまで「余人を持って代えがたい人材」として黒川氏の定年延長を行い、検事長ポストに就かせてきた安倍内閣。定年延長を閣議に提起したのは森まさこ法務大臣との安倍総理の説明から、法務大臣の責任は極めて重い。今回の事態に森法務大臣の対応は進退伺いだった。辞表を出さなかった。
『責任を痛感している』(森法務大臣)というなら、身をひくべき。しかし、あっさり慰留を受け、大臣ポストに留まるという。「検察の立て直しなどにあたりたい」とは。慰留する安倍内閣の無責任、法務大臣の無責任が際立つ。
日本共産党の志位和夫委員長は「金銭を賭けることは賭博罪。検察官が刑法犯罪に手を染めては、刑事責任を問うことができなくなる」(清水勇男元最高検検事)との言葉を引用し「こんな当たり前のことを言わなければならないのは、本当に恥ずべきこと。堕落の根源に、安倍政権による違憲・違法な定年延長がある」と閣議決定撤回を求める。
政府、自民、公明は検察庁法改正、黒川氏の定年延長、賭けマージャンで「訓告」、法相続投といった一連の事案に対する国民の疑問、怒り、納得できない多くの声に真摯な姿勢になることが必要。元検事総長ら検察OBの意見書も踏まえたうえで、森法務大臣はじめ安倍総理にはきちっと国会で説明責任を果たし、具体に責任を取ることが必要ではないだろうか。(編集担当:森高龍二)