現在普及している給電方式はケーブルをコンセントにつないで電力を送る有線給電方式だ。複数のケーブルを用いると配線がごちゃごちゃし作業効率にもデメリットがある。そこで現在普及し始めたのがワイヤレス給電だ。ワイヤレス給電は送電コイルと受電コイルを用いケーブルを用いずに給電・充電が可能となりデバイスの使い勝手を格段に向上させる。
ワイヤレス給電は1990年代から一部の小型家電製品などに搭載されてきたが、当初は特定製品間における用途が中心であった。その後2010年に標準規格としてQi規格が策定されたことで現在では様々な製品にワイヤレス給電機能が付与されている。
5月28日、矢野経済研究所が20年のワイヤレス給電市場における用途別の動向、参入企業動向、将来展望についてのレポートを公表した。レポートによれば、19年の受電モジュールおよび受電機器などワイヤレス給電の世界市場規模は出荷金額ベースで前年比107.6%の1601億99百万円となっている。
用途別にみると、小型電子機器用のシェアが最も高く、これが市場を牽引しており、またシェアは少ないものの産業機器用でもワイヤレス給電システムが採用されはじめ堅調な成長を見せている。EV向けは未だ普及するまでには至ってないものの今後最も成長潜在性のある市場として期待されている。また、今後は家電、医療機器など様々な分野にも広がって行く見込みだ。
既に小型電子機器分野で最もワイヤレス給電の受信モジュールの採用が多いが、今後は高仕様・高価格のスマートフォンにはワイヤレス給電が標準搭載される傾向になると予測される。EVでの採用も大きく期待されているもののワイヤレス給電の採用は今後のEV自体の航続距離や普及に大きく影響され、給電システムインフラ整備の課題も残っており、これらを解決するにはしばらく時間が必要なようだ。
産業機器分野においては、AGV(無人搬送車)を中心にワイヤレス給電の採用が増加し省人化に寄与している。新規参入企業の中にはとりあえずAGV市場から参入しようとする企業も増えてきており今後競争が一層激化すると予想される。
レポートでは「今後、遠距離間や複数機器への一度での給電、移動し続ける機械への給電が可能な新製品が期待されており、これらが実現していくことにより、2030年のワイヤレス給電の世界市場は出荷金額ベースで2739億6百万円まで成長すると予測」している。(編集担当:久保田雄城)