新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が全面解除されてから1カ月が経過する。東京でも19日に各種要請が全面解除となり、全国的に行政による経済社会への規制はなくなった。しかし、政府の専門家会議は「引き続き、基本的には、『徹底した行動変容の要請』が必要」とし、政府は5月7日に「新しい生活様式」を国民に要請している。この「新しい生活様式」には法的な効果は無いとは言え、経済社会は元の状態に戻ったとは言えない。
16日、東京商工リサーチが第5回「新型コロナウイルスに関するアンケート」の調査結果を公表した。この調査は5月28日から6月9日にインターネットを経由して実施されたもので有効回答1万8462社を得て集計、分析されたものだ。
レポートによれば、新型コロナウイルス感染症の企業活動への影響について聞いた結果では、「現時点ですでに影響が出ている」と回答した企業の割合は78.7%で、「今後影響が出る可能性がある」が18.2%とほとんどの企業で影響を受けているようだ。
「すでに影響が出ている」と回答した企業の割合を産業別に見ると、「小売業」が85.4%と最も多く、次いで「サービス業」の83.9%、「製造業」83.3%と続いている。やはり、インバウンド減少、外出自粛、休業要請の影響が強く感じられる結果だ。さらに産業を細分化した業種別で見ると「飲食店」、「宿泊業」、「道路旅客運送業」の3業種で「すでに影響が出ている」は100%となっており、改めてインバウンド消失、外出自粛の影響の強さを感じさせる。
「国が示した『新しい生活様式』は業績にどのような影響を及ぼすか」と尋ねた結果では、「マイナスの影響」と答えた企業の割合は42.6%、「どちらともいえない」が52.9%、「プラスの影響」が4.4%となっており未だ影響が終息せず先行きを図りかねている企業が多いようだ。
企業規模別に見ると、「マイナスの影響」と答えた企業は資本金1億円以上では39.4%に対して資本金1億円未満の企業では43.3%となっており中小企業ほど「マイナスの影響」を見込んでいるようだ。
レポートでは「国は『新しい生活様式』で感染防止を呼び掛けるが、長年続いた商慣習や勤務スタイルを変えることは難しい」、本調査結果は「リモートワークの恒久化やソーシャルディスタンスの確保と生産性や売上維持の両立の難しさを物語っている」と指摘している。(編集担当:久保田雄城)