世界各地で猛威をふるい続けている新型コロナウイルス。7月17日には世界全体での新規感染者数が過去最多の23万7,743人を記録するなど、未だ勢いは衰えない。日本でも東京や大阪などの都市部を中心に感染者が再び増加傾向にあり、緊張が高まっている。経済活動を再び停止させてしまわないためには、個人の衛生意識の向上だけではなく、企業や団体も新しい生活様式に早急に対応し、社会全体が変わっていかなくてはならない。
職場や働き方も変わり始めている。
例えば、2017年頃からテレワーク勤務制度をいち早く正式導入している富士通は、従業員がこれまで以上に高い生産性を発揮し、イノベーションを創出し続けるための、ニューノーマルにおける新しい働き方として「Work Life Shift」の推進を発表している。これは、人事制度やオフィス環境を刷新し、生産性やイノベーション力の向上を実現するものだ。オフィス環境面では、従業員がそれぞれの業務目的に最も適した場所から自由に選択できるようにするとともに、全席をフリーアドレス化。2022年度末までのわずか2年で、オフィスの規模を現状の50%程度に最適化するという。また今年4月からは、国内グループの約15,000人の幹部社員約を対象に職責に応じた報酬設定と人材配置を実現するジョブ型人事制度を導入している。
私たちが暮らす住まいも役割も変わり始めている。足元では住宅各社も在宅ワークに対応する空間提案などを強化している。中でも、さらに未来も見据えた希望を感じさせる取り組みをはじめたのが、東京大学と積水ハウスだ。
建築学における最先端のデジタルテクノロジーの活用研究と国際的な人材育成を目指す東京大学。そして、「『わが家』を世界一 幸せな場所にする」というグローバルビジョンを掲げ、住を基軸に、ハード・ソフト・サービスを提供するグローバル企業を目指す、積水ハウス。この両者が産学連携して取り組むのが、日本を代表する建築家であり、東京大学特別教授も務める隈研吾氏を中心とした「国際建築教育拠点(SEKISUI HOUSE-KUMA LAB)」総括寄付講座だ。同講座は2020年6月1日に東京大学総長室総括プロジェクト機構に設置され、今後5年間にわたって活動を開始することが発表された。
国際デザインスタジオ、デジタルファブリケーションセンター、デジタルアーカイブセンターの3つの拠点の活動を展開することによって、建築学の各領域における国際的な研究・教育拠点の確立を目指しながら、「未来の住まいのあり方」を探究していく。
今後、ウィズコロナ時代では在宅時間も増え、生活の中で「住宅」が果たす役割も大きく変わってくるだろう。単なるくつろぎの空間ではなく、実用的であることやプライベートの確保も今以上に求められるだろう。そして、そんな中だからこそ、いかに快適で幸せな空間であるかが今後の住宅のカギとなるのではないだろうか。
住宅業界に限らず、あらゆる業界において、現状のコロナ対応だけでなく、この先の10年、20年先の未来を見据えた持続可能な取り組みが、今こそ求められている。(編集担当:藤原伊織)