重油汚染、環境への取り組みを世界に示す機会に

2020年08月30日 09:47

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「日本による環境汚染問題」として、日本政府が解決に本腰を入れ、責任をもって取り組まなければならないレベルにある

 サンゴ礁の広がるインド洋の島国モーリシャスの沖合で日本の貨物船が7月25日、座礁事故を引き起こした問題。1000トンもの重油が船外に流れ、島の南東部沿岸に10キロ以上にわたり漂着、貴重なマングローブ林やラグーンに生息する絶滅危惧種を含む固有種などを深刻な危機に追い込んでいる。

 この問題は「日本による環境汚染問題」として、日本政府が解決に本腰を入れ、責任をもって取り組まなければならないレベルにある。

 政府は専門家を派遣し、重油の流出状況や環境への影響を調査しているが、重油の回収作業に必要な物資提供はもちろん、重油回収作業に詳しい専門家らとともに自衛隊から「回収作業隊」を結成し、隊を派遣する措置を講じて対処すべきでないか。モーリシャス政府に声かけすべきだ。

 今回の重油による汚染は岡山県笠岡市にある長鋪(ながしき)汽船が保有、商船三井がチャーターした貨物船「わかしお」が引き起こした。このことを踏まえれば、フランスや中国、インドが行っている支援レベル以上の取り組みを日本政府が行わなければ、生物多様性の重要性や地球環境問題に関する日本政府の認識が薄いと見られ、環境問題への取り組みに国際的な理解は得られないだろう。何より、目の前の重油汚染を早期に処理しなければ環境への影響が深刻化するばかりだ。

 商船三井は長鋪汽船から「座礁した船体の前方部分は今月24日、モーリシャス政府の指示に基づき、専門家チームにより作動油の除去などの対策をした上で、モーリシャス領海内に沈下させたと連絡を受けた。モーリシャス政府の指示、および同国国内法や国際法令に則り処分が行われたと認識している」とHPで報告。船体後方部分については「関係当局および船主手配の専門家チームが撤去計画を検討中」とした。サンゴ礁への被害が懸念されている。

 同社はHPで「当社が手配した現地での油清掃に必要な物資は空輸で現地に到着し、防護服やマスク、油吸着材などの追加物資は26日と28日頃の現地到着を予定。今後も油濁清掃に必要な資材を提供していく予定で、モーリシャスおよび日本の関係当局と連携し、船主と共に早期の事態解決に取り組む」考えを示している。

 今回の事故に対して、国際環境NGOグリーンピースは「企業の責任は法的義務で終わりじゃない」と25日、同社前で横断幕を掲げて「汚染を繰り返さないために、より踏み込んだ対応を」するよう訴えた。

 グリーンピース・ジャパンの関根彩子さんは「貨物船が座礁して1カ月が経過しますが、現地では懸命な油の回収が続いています。さらに、モーリシャス政府が割れた船体の前半分を海中に投棄し、重金属などによるさらなる汚染が懸念される事態になっています。今回の事故による汚染が環境や人々の暮らしに与える影響は計り知れない」と強い懸念を示している。

 そのうえで「法令上の義務や国際的な慣行に従うだけでは再発防止の実現は難しいといわざるを得ません。商船三井と長鋪汽船は事故当事者である自分たちが何をすべきなのかということを認識し、企業としての社会的責任を果たすべき」と訴える。

 今回の座礁事故を民間貨物船事故と捉えるのではなく、日本企業が引き起こした重大な環境問題事案として認識し、政府あげて重油汚染の解決に動かなくてはいけない。

 重油が付着しつづければマングローブは枯死し、周辺のあらゆる生物に深刻な悪影響を与える。サンゴ礁に影響が出ることも容易に推測できる。日本の問題として、環境への取り組みを世界に示す機会にしてほしい。日本政府に迅速な対応を期待する。(編集担当:森高龍二)