水素燃料電池車が商用化されるようになってからしばらく経つが水素エネルギーは化石燃料に代わるCO2を排出しない次世代エネルギーとして期待されている。政府は既に2017年12月に「水素基本戦略」を打ち出し水素社会の実現に向かって様々な施策を講じている。現在期待され、また実用化されている水素エネルギーの用途はFCV(燃料電池自動車)やFCバス(燃料電池バス)などで、この他フォークリフトなど産業用車両など運輸部門での利用が先行している。
また今後、普及が期待されるのは家庭用燃料電池である「エネファーム」で、一般家庭では25%の省エネと40%のCO2削減を実現するとされる。価格も順調に低下しており今後の普及が期待される。
9月28日、矢野経済研究所が国内における水素エネルギーシステム市場の現状及び今後の方向性を調査した結果レポートを公表している。
今後普及が期待される家庭用FC(エネファーム)にはPEFC(固体高分子形燃料電池)とSOFC(固体酸化物形燃料電池)が存在する。それぞれFCセルの運転温度が異なっており、PEFCでは70~90℃であるのに対してSOFCでは電解質にセラミック材料を使用することにより700~1000℃と高温の運転温度となっている。
レポートによれば、PEFCエネファーム(700W機)は新築住宅を中心に販売されてきており、ハウスメーカーでの採用も多くなっている。最近では、一次消費エネルギー量収支をゼロにするZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)スキームによる採用が増えてきており、PEFCエネファーム販売の半分程度は新築のZEH物件となっているようだ。
一方、SOFCエネファームは小型・高効率のエネファームtype-S(700W機)が販売され小型化によりマンションにも設置可能となり、さらに、SOFCエネファームミニ(400W機)も製品化されて既築の戸建や集合住宅にも設置可能となった。
水素エネルギー社会では都市ガス燃料のエネファームのみでなくCO2フリー水素を燃料とする純水素FCも含め普及させる必要があり、これまでは都市ガス会社が主にエネファーム供給を担ってきたが、今後は誰が水素を供給していく事業主体になるかが課題になってきている。
以上のような見通しから水素エネルギーシステム市場の規模は20年度に952億円、30年度は1兆2289億円、50年度には3兆7940億円に拡大するとレポートは予測している。(編集担当:久保田雄城)