旧車無策の日本から旧高性能車が今、米国流出する理由 米国「25年ルール」とは?

2020年10月04日 09:08

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R32型日産スカイラインGT-R、米「25年ルール」によって日本からアメリカに大量に流出している 写真奥にはホンダNSXがみえる いずれも米国で人気の中古車だ

 米国には旧車の購入・所有について、通称「25年ルール」という制度がある。この制度は米国高速道路交通安全局(NHTSA)が、登録から25年以上経過した車両に対し、その古さ故の価値を認めた製品として認可、輸入車に対する試験を免除するという規則だ。

 クルマの通行区分が右側通行の米国を含むカナダなど北米では、右ハンドル車の走行は危険だとして、右ハンドル仕様の英国車や日本車の輸入は禁止されてきた。しかし、北米で一般ユーザーが乗れないはずの右ハンドル車が、「25年ルール」による緩和措置で、1980?1990年代の日本製高性能スポーツカーやクロスカントリー向け高性能四輪駆動車が北米に流れている。

 つまり2018年あたりから、80年代?90年代の日本製高性能スポーツカーで、当時左ハンドルの設定が無く、新車時に米国に輸出されなかった高性能車が、今になって米国に多量に輸出されているのだ。1989年型「R32型日産スカイラインGT-R」以降のRB26DETT型2.6リッター直列6気筒DOHCターボ搭載車から火が付いて「Japanese Right hander Sport」の人気が沸騰しているというのである。

 あの誰もが名機と呼ぶ「R32型GT-R」は史上もっとも販売台数が多いGT-Rで、国内の中古車市場でも比較的潤沢に流通していた。しかし、米国「25年ルール」によって米国内でブームとなり、大量に流出している。

 米国でこの「25年ルール」が適用されるのは、製造から25年が経過したクルマだ。25年ルールの適用でハンドルの位置についての規制が解かれるが、それ以外の規制も緩和される。米国では車検の代わりに排ガス検査があるが、その検査もない。つまり製造から25年を経過すれば、北米でクルマを輸入、販売、走行に関わる規制が無くなるのだ。

 日本の中古車は、国土の寸法の違いから、米国中古車など較べて走行距離が比較にならないほど短い。それも人気に拍車がかかっている理由だと云う。中古とはいえない高いクオリティが日本製スポーツ車の特徴なのだ。

 また、日本国内では旧車を所有・維持しにくい環境があることも、北米流出を加速させているようだ。日本では、国内の旧車ユーザーに重税を課す。自家用乗用車は初度登録(から13年経過して所有すると毎年の自動車税が115%にアップする。加えて13年と18年を超すと車検毎に支払う自動車重量税も大きく上がる。

 加えて、自動車重量税も大きくアップ。小型/普通乗用車なら、初年度登録から13年を経過すると139%、18年を経過すると154%に増える。

 つまり、日本では18年以上クルマを所有し続けるには、相当なコストがかかるという訳で、25年もの前の旧車は保有しにくい。

 ところで、米国で人気が出ている旧型の日本製スポーツはどんなクルマだろうか。筆頭は、米国でも人気車のGT-Rだ。R32型はもちろんR33型、1999年製の初めて6速MTを搭載した1万1344台だけが生産されたR34型GT-Rもまもなく米国からフォーカスされるはず。なかでもマイチェン後の「VスペックⅡ」、2002年に登場した生産終了記念モデル「VスペックⅡ・ニュル仕様」は注目株といえる。

 初代ホンダNSXは米国でもアキュラブランドで発売していたが、右ハンドルの日本仕様が人気だ。なかでも日本だけの発売だった1992年?95年製「タイプR」は注目株。なお、1997年から3.2リッターとなり、マニュアルミッションが5速から6速に進化した「タイプSゼロ」に今後、注目ガ集まるはずだ。

 マツダのFD型ロータリースポーツ「RX-7」も米国に送られているクルマのひとつだ。13B型シーケンシャルツインターボ搭載の過激とも云える最後のロータリーターボFRスポーツ、最終特別限定車「RX-7スピリットR」が注目株だ。

 旧車ユーザーを無視する政策無策の日本から、名車と言われたスポーツカーが北米へ向かっている。(編集担当:吉田恒)