日本学術会議推薦による会員への任命を違法に拒否した菅義偉総理に対し、社会民主党の吉田忠智幹事長は5日までに「(政府の方針に)『反対する官僚は異動だ』と言い切り、官僚への統制を強めようとしている菅首相が、学問にまで政治介入してきたことは、政府に反対すること自体をやめさせようとする狙いを感じる」とする談話を発表した。
そのうえで、今回の事案で「首相とは異なる歴史認識をもつ研究者を任命しないといったことにもなりかねない」と違法行為とともに重大な問題を生じることを懸念した。
吉田幹事長は「科学は政治の従僕ではない」としたうえで「批判によってこそ学問や研究は発展する。政府への批判を封じ、学問や研究を萎縮させ、科学の向上発達を損なうことは、文化国家の基礎を揺るがすものであり、断じて看過できない」と非難。
今回の措置についての政府対応が「公選制から推薦制に変えた法改正を審議した際の、『政府の行為は形式的行為』、『政府が行うのは形式的任命にすぎない』(中曽根康弘首相)、『ただ形だけの推薦制であって、学会の方から推薦をしていただいた者は拒否はしない』(丹羽兵助総理府総務長官)、『実質的に首相の任命で会員の任命を左右するということは考えていない』(手塚康夫内閣官房総務審議官)といった国会答弁と明らかに齟齬が生じる」ことも指摘した。
安倍政権下で軍事目的の科学研究を大学に行わせる流れが作り出されたが「日本学術会議は、1950年に『戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない』旨の声明を出し、1967年には同じ文言を含む『軍事目的のための科学研究を行わない声明』を出していた中で、2017年3月24日に、安倍政権下で改めて『軍事的安全保障研究に関する声明』を発していた。
声明では「学術研究がとりわけ政治権力によって制約されたり、動員されたりすることがあるという歴史的な経験をふまえて、研究の自主性・自律性、そして特に研究成果の公開性が担保されなければならない。しかるに軍事的安全保障研究では、研究の期間内及び期間後に、研究の方向性や秘密性の保持をめぐって、政府による研究者の活動への介入が強まる懸念がある。大学等の各研究機関は、軍事的安全保障研究と見なされる可能性のある研究について、その適切性を目的、方法、応用の妥当性の観点から技術的・倫理的に審査する制度を設けるべきである。学協会等において、それぞれの学術分野の性格に応じて、ガイドライン等を設定することも求められる。科学者を代表する機関としての日本学術会議は、そうした議論に資する視点と知見を提供すべく、今後も率先して検討を進めて行く」とした内容で、政府との距離を確保し、学問の自由が順守される距離を明確にしていることから、安倍政権を継承する菅政権は、政府方針に反する科学者らを学術会議メンバーから外す狙いが透けて見える。菅総理は今回排除の6人を日本学術会議推薦通りに任命しなければならない。(編集担当:森高龍二)