種子島北部に位置する鹿児島県西之表(にしのおもて)市の八板俊輔市長は7日、政府が空母艦載機の離発着訓練地にするため同市馬毛島のほぼ全域を取得し(すでに取得済み)、併せて米軍空母艦載機の離発着訓練恒常的施設として活用する計画を進めていることについて「施設設置で失うものの方が大きい」と国の計画に同意できないとの所見を発表した。
空母艦載機(F35B=短距離離艦、垂直着艦の戦闘機)の訓練は恒常的に繰り返して技術を磨き続けることが欠かせない。一方で、騒音問題に加え、日米地位協定により米軍が自由に行動できることへの懸念も否めない。
馬毛島は無人島で、騒音問題を一定抑制できるとの見方もあるが、西之表市市街地から10数キロしか離れておらず、飛行訓練で周辺居住区への騒音等の影響は回避できない。
八板市長は「馬毛島問題への所見」として、7日、考えを明らかにした。この中で「馬毛島に米軍の空母艦載機離着陸訓練(FCLP)施設を造る計画は種子島の未来にわたる問題であり、地元住民、自治体だけでなく、周辺自治体、県民、国民にも大きな影響を及ぼす。安全保障の課題であるとともに、日本の独立の在り方も問われる重大事」との認識を述べた。
そのうえで「防衛省の施設整備案は本市が利活用を考えている小中学校跡、自然、生活関連跡などに関する 記載は皆無であり、地元の歴史・文化に配慮する視点はうかがえません」と指摘し、地元住民の間で賛成する人は「基地建設での経済効果を期待」、反対する人は「自然環境への悪影響、騒音などの基地被害、漁業、観光など産業への影響を心配している」とした。
そうした中で、市長は(1)米軍、自衛隊の補給、集積地として馬毛島が重要な施設となれば、軍事上の標的となり、地域住民の安全が脅かされることになる。(2)航空機騒音や漁業への影響を国は「最小限にとどめる」というが、言いかえれば影響は避けられない。訓練自体も種子島に拡大する可能性がある(3)防衛省が地元に求める「御理解御協力」は基地被害を甘んじて受ける覚悟を迫っているようにみえる、とした。
加えて、明らかになったこととして、市長は「森林などの自然、豊かな漁場の大部分がさらに失われる。シンボルの岳之腰(標高 71㍍)が撤去され、 何千年も維持されてきた自然景観が人為的に変えられる。既に今も、国有地を理由に立ち入りが制限され、自然や遺跡など西之表市の市史編さんに関する調査すら、半年も止められている」などをあげた。
また、懸念されることとして(1)米軍の訓練や基地に対して、日本は制限がかけられない。一度、基地を容認すると米軍は自由に行動でき、国内法で歯止めがかけられない状態が、沖縄をはじめ日本各地で起きている(2)嘉手納(沖縄)や厚木(神奈川)で基地周辺住民が騒音訴訟をおこし、「違法」判断が出ても、軍用機の飛行差し止めは認められず、住民の望むような改善は実施されないのが実態(3)施設整備案で「陸海空自衛隊の訓練」に例示された訓練はステルス戦闘機F35B や輸送機オスプレイなど米軍と共通機種の航空機なども対象とされ、将来は米軍、自衛隊双方の訓練が集中する可能性があり、騒音、環境汚染などの各種基地被害の拡大が懸念される、としている。(編集担当:森高龍二)