新型コロナウイルス感染拡大の影響で、旅行、宿泊業界が大きな打撃を受ける中、withコロナ、Afterコロナ時代における「新しい旅の様式」を象徴するようなホテルが誕生した。住宅メーカー大手の積水ハウス〈1928〉と、世界各地に7,400軒を超えるホテルを展開するマリオット・インターナショナルがタッグを組んで仕掛ける、新しい旅のスタイルを演出するコンセプトホテル「フェアフィールド・バイ・マリオット・京都京丹波」だ。
10月8日、風光明媚な京都府京丹波町にオープンした同ホテルは、積水ハウスとマリオット・インターナショナルが共同で展開している地方創生事業「Trip Base(トリップベース) 道の駅プロジェクト」の旅の拠点となるホテルの一つで、10月6日に先行して開業した「フェアフィールド・バイ・マリオット・岐阜清流里山公園」(岐阜県美濃加茂市)と「フェアフィールド・バイ・マリオット・岐阜美濃」(岐阜県美濃市)、同じく10月7日に開業した「フェアフィールド・バイ・マリオット・栃木宇都宮」(栃木県宇都宮市)に続いて、関西エリアでは初開業となる。インバウンド需要も激減し、存続すら危ぶまれるようなホテルや旅館が増えているこのご時世で、続々と開業に踏み切るのには大きな理由があった。
「Trip Base 道の駅プロジェクト」の柱となるホテル「フェアフィールド・バイ・マリオット」には、他のホテルや旅館にはない、いくつかの共通点がある。その最も大きな特徴が、いずれも「道の駅」に隣接しているという点だ。道の駅といえば、地方を旅行中にトイレに立ち寄ったり、地元のお土産や特産品などを購入したり、旅の途中に立ち寄ることは多くても、あくまで偶然通りかかるような通過点でしかなかった。ところが、同プロジェクトではこの道の駅を「通過点」から、地域の知られざる魅力を発信する「旅の拠点」に変えようというのだ。
「フェアフィールド・バイ・マリオット・京都京丹波」のオープニングセレモニーに登壇した積水ハウスの仲井嘉浩代表取締役社長もこの点を強調し、同プロジェクトは地域やパートナー企業とともに、観光を通じて地域経済を共に創り上げ、活性化していく事業だと述べた。また、そのための核となるポイントとして、宿泊に特化したホテルであること、地域を渡り歩く旅のスタイルの提案、そして、自治体やパートナー企業とのアライアンスの3つを挙げた。
「宿泊に特化したホテル」とは、同ホテルがレストランを設置していない宿泊施設であるということだ。ホテルの重要なオプションであるはずのレストランを設けない代わりに、その役割を隣接する道の駅や地元の飲食店に託す。そうすることで、旅行者と地域人々との交流や道の駅との往来を増やし、地域経済の活性化を促そうというのだ。また、同プロジェクトでは25道府県の自治体、36社のパートナー企業と事業連携を進めており、共に地域の魅力を発掘し、コンテンツ化するための具体的な活動も始まっているという。仲井社長は「ホテルを起点にこれまでとは異なる切り口で『京都の新たな魅力』を発信できる」と自信を覗かせた。
セレモニーに臨席した西脇隆俊京都府知事も祝辞を述べ、京丹波町が京都市内や大阪市内から約1時間しか離れてない好立地であること、それにもかかわらず、年間を通じて自然の豊かな恵みを堪能できること、そして同ホテルが隣接する「道の駅 京丹波 味夢の里」には地元の名産を使ったレストランや特産品が集まるマルシェなどもある素晴らしい道の駅であると称え、コロナ禍で制限されてしまった人との交流・ふれあいなどが、このホテルを起点に再び活性化することを期待すると語った。
ホテルの開業に合わせ、10月1日からは、同道の駅からの町営バスの新路線の運航も開始された。Go To トラベルキャンペーンを利用して、3密を避けながら車で、近場へ旅行したいというコロナ禍における旅のニーズにもマッチする。また、ワーケーションの受け皿にもなるのではないか。都会の喧騒から離れ、コロナ疲れの身体と心をのんびりと癒すのにもちょうどいいかもしれない。
インバウンドが期待できない中で、いかに国内の需要を喚起するかが、旅行業界、宿泊業界、さらには地方経済存続のための喫緊の課題だ。同プロジェクトでは、2025年までに25道府県、約3000室規模の拡大を目指しているが、未知なるニッポンを渡り歩く旅、未知なるニッポンを創造する挑戦に期待したい。(編集担当:今井慎太郎)