日本学術会議の会員任命を巡り、時事通信に続き、共同通信も政府関係者から確認が取れたとして杉田和博官房副長官が「任命できない人が複数いる」と菅義偉総理に口頭で報告したことを伝えた。
菅総理は、任命できない理由とその人物6人の名前を決裁時に認識していたはずで、9日の内閣記者会インタビューで虚偽説明した可能性がある。
総理決裁起案書には日本学術会議から総理あての会員推薦名簿が「参考資料」(加藤勝信官房長官の弁)として添付されていたといい、まさか6人の名前が黒塗りになっているはずもなく、総理はそこでも、だれが外れたのか、確認できたはず。
外された6人は憲法学者で安保法制の際、国会の中央公聴会で「憲法上、多くの問題点をはらむ」として反対意見を述べた小沢隆一東京慈恵会医科大学教授はじめ、行政法学の岡田正則早稲田大学教授、宗教学の芦名定道京都大学教授、特定秘密保護法案に反対した政治思想史の宇野重規東京大学教授、日本近代史の加藤陽子東京大学教授、共謀罪を戦後最悪の治安立法だと国会参考人質疑で指摘した刑事法学の松宮孝明教授。いずれも専門的、学術的立場から、政府法案の問題点や懸念されるところを論じた。
こうしたことを理由に「日本の科学者の代表機関」とされる日本学術会議への道が閉ざされるとすれば、時の政府の政策に反対すれば任命されないことになると自由な学術活動に委縮が生じ、国益を損し、「任命しない」との威嚇につながることは避けられない。
杉田官房副長官を巡っては前川喜平元文部科学事務次官が自ら次官時代に文化審議会文化功労者選考分科会委員の候補者リストを杉田氏に持参したところ、実績と専門性に着目して選ぶものであるのに『安倍政権を批判したから』と二人の候補を変えるよう言われた、と複数のマスコミインタビューに答えていた。
政府説明の「総合的、俯瞰(ふかん)的に判断」とは「政府方針に沿わない思想信条や政権批判する学者を外すこと」を言うのか、憲法が保障する「学問の自由」を侵害する行為につながるもので、杉田官房副長官が直接説明する必要もでてきた。(編集担当:森高龍二)