日本の農業生産性は低いと長らく指摘されてきた。日本の食糧自給率は2019年の時点で38%と決して高くない状態だ。日本の農業生産性が低い原因の一つには地政学的な要因があるが、そうした制約の中で有機農業等、安心安全の高品質商品の開発も進んでおり、日本の農業の国際競争力は決して著しく低いというわけでもない。単純な労働生産性向上に関してはドローン技術やAIロボットを駆使した農業などその克服に向けた動きが精力的に行われている。
1月18日、矢野経済研究所がスマート農業に関する調査レポートを発表している。スマート農業とはドローン技術やAIロボット、クラウドネットワークシステムなどを複合駆使して農業の生産性と質の向上を図ろうとする農業分野での取り組みだ。
レポートによれば、19年度のスマート農業の国内市場は180億700万円、20年度には203億2800万円が見込まれており、順調に成長していると言える。17年から2019年度は農業クラウド・複合環境制御装置・畜産向け生産支援ソリューションなどの栽培支援ソリューションが牽引し、19年度以降は、ドローンを利用した農薬散布ソリューション、ロボット農機の普及が拡大している。
特に現在注目すべき動きは、農業用ドローンを利用した農薬散布の普及拡大だ。ドローンによる農薬散布は、農業用ドローンに適応した農薬数の拡大などが追い風になり、19年度以降、大規模水稲農家を中心に普及拡大しており、今後野菜や果樹農家にも普及拡大すると見られる。更に肥料散布や播種などへの普及も期待されている。
現在、企業による実証試験の段間で本格的な普及は22年以降になる見通しだ。既に農業データ連携基盤の運用が19年から始まっており、21年度には農業オープンAPIの整備が始まることから、より一層のデータ共有化・連携が進むと見られる。さらに通信技術(5G、ローカル5G)の進展により、ロボット農機の普及拡大はますます加速すると期待される。これまで日本の農業は守りの農業だったがドローン、AIロボット化等のスマート化により攻めの農業産業への転換が始まっていると言える。(編集担当:久保田雄城)