2018年、イギリスの人材会社の大手ヘイズが「日本は世界一スキル不足の国」というレポートを発表し話題となった。日本にはAIやアナリティクスを担えるデータサイエンティストなどのハイスキルITエンジニアが圧倒的に不足しているからだ。こうした人的資源の不足は専門家から「いずれ日本は産業崩壊を起こす」とまで危惧されるものだ。そして今それが顕在化し始めたようだ。
2月2日、人材サービスの大手アデコが上場企業に勤務する40から50代の管理職800名を対象に「AI(人工知能)導入に関する意識調査」を実施し、その集計レポートを発表している。レポートによれば、上場企業の部長職・課長職にAIの導入状況を尋ねたところ、4分の1にあたる25.6%が「すでに導入している」と回答、また「3年以内に導入を予定している」という回答は27.0%で、半数以上の企業は導入済または導入予定であるようだ。
「AI導入にあたり直面している課題」について質問した結果では、「AIの導入をリードできる人財がいない」が33.0%と3分の1を占め最も多く、次いで「AIを扱える人財がいない」が30.9%とAI導入や運用に関し人材が圧倒的に不足している実態が明らかとなった。この他、「AIに学習させるデータがない・整備されていない」が22.5%と準備不足の状態にある企業も少なくなく。また、「現場の理解・知識不足」20.4%や「AI導入の効果が分からない」19.1%などAIの導入・運用のスキル以前にAIに関する認識が低い企業も少なくないようだ。
「日本の国際競争力の維持のためにAIの導入が必要であると思うか」と質問した結果では、「とても必要」が35.0%、「まあ必要」37.3%、両者の合計が72.3%と7割以上の企業では必要性を感じている。「諸外国と比較して日本国内のAI導入は進んでいると思うか」と尋ねた結果では、「遅れていると思う」が68.0%と最も多く、7割近くが「日本のAI導入は世界から遅れている」との認識のようだ。
ボストンコンサルティンググループが19年に発表している「企業のAIの導入状況に関する各国調査」によれば、日本の「AIアクティブプレーヤー」の割合は調査対象7か国中で最低という結果が出ている。この調査でも、日本企業がようやくAIで世界から遅れを取っていることに気付き始めたようだ。(編集担当:久保田雄城)