IoTという用語が流行ったが、今では半ば当たり前のようになり、自動車産業でのCASE(コネクテッド、自動、シャアリング、電動化)などのように製品ごとの機能で呼称されるようになってきている。2010年代初頭からおよそ10年周期の設備投資循環が始まったが、この循環の中ではこれまでになくIT投資が活発となった。背景には震災後のセキュリティー問題に加え電子データの蓄積とスマートフォンの普及などAI実装社会の拡大を見込んだ攻めの投資がある程度広がりをみせた時期であるとも言える。しかし、このところIoTをターゲットとしたIT企業の市場参入は減少傾向に転じているようだ。
4月1日、矢野経済研究所が「IoT関連市場への新規参入動向調査」の結果を発表している。この調査ではインターネット元年とされる1995年度以降に設立された資本金10億円未満のIT関連事業者のうち各種開示情報などからIoT関連マーケットへ新規参入したIT企業(IoT関連ベンダー、AI関連ベンダー、解析関連ベンダー、その他等)を調査対象としている。その結果、392社の企業がIoT関連ビジネスへ参入したことを確認した。
392社のターゲット業種での出現率をみると、「マーケティング・サービス」が42.1%で最も多く。次いで「流通・小売」が37.2%、「製造」35.7%の順となっており、この3業種が3割を超えている。逆に低い分野は、「農業・畜産」5.4%、「教育・トレーニング」13.5%、「自動車」16.6%、「建設」17.9%の順だ。ただし、「IT」、「教育・トレーニング」、「その他(汎用含む)」を合算すると合計355件となり、業種を問わない汎用ツール、自社ビジネス活用としての参入は多いことになる。
参入時期について時期が明らかな367社で見ると、「2011~2015年度」が全体の30.0%を占め最多、次いで「2016年度以降」27.8%、「2006~2010年度」18.3%の順だ。参入企業の6割は11年度以降に参入しており、最多は16年度の35社となっている。20年度では、AI関連技術開発や音声自動文字起こしサービス、マンガに特化した機械翻訳、画像認識サービス、アバターロボット、XR(複合現実)などの分野で6社の新規参入が確認されたが、19年度以前と比べ参入企業数は大幅に減少している。この大幅減少がコロナによる一過的な影響によるものか、趨勢的なものかは判断できない。(編集担当:久保田雄城)