急拡大する車載電装システム市場。最先端の車には部品のスペースが足りない?

2021年04月25日 08:38

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車載電装システムの世界市場は2020年見込みの約19兆円に対し、2030年にはおよそ2.2倍の42兆5545億円に達する見通し

 富士キメラ総研は2020年10月から12月の2か月間にわたり、車載電装システム合計22品目について、国、地域別の市場調査を実施。それを踏まえて2021年4月に発表された最新の世界市場予測によると、車載電装システムの世界市場は2020年見込みの約19兆円に対し、2030年にはおよそ2.2倍の42兆5545億円に達する見通しだという。

 中でも注目されているのは「ADAS(先進運転支援システム)」や「自動運転システム」「ドライバーモニタリングシステム」といった自動運転や走行安全のための支援システムだ。同社によると、2030年のそれぞれの市場規模は、ADAS市場は2020年比で2倍強となる2兆3951億円、自動運転システム市場はなんと約744倍の1兆4881億円、ドライバーモニタリングシステム市場も約34.5倍の2785億円と、いずれも急成長、急拡大を遂げると予測。それに伴って、電動車に搭載されるモータ周辺部品や、自動運転システム向けのカメラやセンサなどの需要も伸びるとみている。

 一方で、課題となるのが部品の搭載スペースの問題だ。高性能な車になるのはいいが、その分、搭載される部品の点数も増え続けている。一つ一つは微々たるものでも、積み重なれば大きくなる。だからといって、車のサイズを大きくするわけにもいかない。そのため、これらを限られたスペースの中にいかに抑えるかが、今後の車載部品市場における開発競争で、明暗を分ける最重要事項の一つになっているのだ。

 例えば、TDKはECU(エンジンコントロールユニット)の回路基板の省スペース化に貢献する小型・高特性の車載LAN用コモンモードフィルタの開発に力を入れている。自動車は点火プラグからの輻射ノイズ、モータやオルタネータからのサージノイズなど、きわめて過酷なノイズ環境にさらされている。こうしたノイズの影響から電装機器の誤動作を防止するために、車載LANの各ノードに装着されるのがコモンモードフィルタだ。同社では2021年4月6日、より高速な通信が可能な次世代の車載LAN規格CAN FDに対応するコモンモードフィルター「ACT1210Dシリーズ」をいち早く発表した。小型であることはもちろん、 TDKによると業界最高レベルのモード変換特性を備えているという。ADASや自動運転技術を導入した自動車では今後、CAN FDの採用が加速すると言われる中、これに対応したコモンモードフィルターも必須となる。

 また、ロームも4月15日、自動車や産業機器など、高電力を扱うアプリケーションの小型化に貢献する、高電力シャント抵抗器のラインアップの拡充を発表している。

 ちなみに抵抗器とは、文字通り、電気の流れに抵抗する部品のことだ。電気の流れを妨げることで適切な量に調整したり、電圧を分けたり、電気を熱エネルギーに変換したりする働きがある。なかでも電流検出用途で使われるシャント抵抗器は、アプリケーションの高電力化に伴って、高電力かつ高精度対応可能なものが求められている。今回、ロームが発表したシャント抵抗器「GMR320」は、同社の高電力・低抵抗シャント抵抗器「GMRシリーズ」の中でも最大となる、定格電力10Wに対応したものだ。他社品と比べ、温度による抵抗値の変化を半分以下に低減しており、高精度かつ安定した電流検出ができるという。高温環境になりやすい自動車のエンジンECUやヘッドライト、さらには産業機器や白物家電向けの電源やモータなどにも最適な製品となる。

 ちなみに同社の社名であるローム(ROHM)は、創業製品で抵抗器(Resistor) の頭文字「R」と、抵抗値を示す単位のΩ「ohm」に由来している。現在の主流となっているチップ型の抵抗器もロームが世界で初めて量産化したものだ。現在、ロームの売上構成は90%以上が半導体関連となっているが、創業製品の抵抗器にかける情熱はいつまでも失われないようだ。

 長引くコロナ禍の影響や、半導体不足というニュースも飛び交っているが、それでも着実に自動車の改革は進んでいる。日本の部品メーカーの躍進に期待したい。(編集担当:藤原伊織)