慶大等がコロナ対策でCO2濃度測定を提言。濃度1000ppm以下が目安

2021年05月13日 06:46

画・慶大等がコロナ対策でCO2濃度測定を提言。濃度1000ppm以下が目安。

慶大等がコロナ対策でCO2濃度利用を提言。CO2濃度管理は換気の目安として有用

 新型コロナウイルス感染症の流行抑止の標語として3密という言葉が作られた。政府によるクラスター(集団感染)防止を啓発する用語だが、密閉・密集・密接を意味する。感染は主に飛沫感染と接触感染によって起こるとされているが、粒子の小さい飛沫核が長時間空間を漂うエアロゾル感染もそのリスクは否定されていない。このため3密には多数の人が集まる密集や近距離で会話をする密接に加え、換気の重要性を強調する密閉が加わっている。密集や密接は他人と距離をとるなど感覚的に理解できるが、換気状態を表す密閉は直感的にチェックしにくい。これに関して慶応大学などの研究グループがCO2濃度を測定することで換気状態をチェックする方法について提言している。

 5月6日、慶應義塾大学理工学部と福島県立医科大学医学部、産業技術総合研究所安全科学研究部門および花王株式会社安全性科学研究所の研究者からなる共同研究グループが感染症対策としてのCO2濃度基準値に関して調査を行い、その利用方法の提言を公表した。提言のポイントは次の3点だ。(1)「CO2濃度1000ppmを超えないように管理することはが換気の目安として有用」、(2)「ただし、この値は感染症対策として設定されたものではないため、数字に厳密にこだわる必要はない」、(3)「CO2濃度センサーの選び方には注意が必要」。

 日本では明治時代から換気状態を知るためにCO2濃度の計測が行われており、1970年に制定・施行されたビル管理法ではCO2の環境衛生管理基準は1000ppmと定められている。CO2濃度を指標として感染症の対策とする考え方は以前より存在し、厚生労働省も1000ppm基準を「換気の悪い密閉空間」を改善する基準として支持している。しかし、1000ppmに感染予防の明確なエビデンスは無い。

 研究グループは実際に感染が起きた空間データからCO2濃度のシミュレーションを実施、CO2濃度9000ppmの状態にあったと推定した。この結果から「CO2濃度が1000ppmを超えないように管理することは妥当」とした上で「この値は感染リスクを念頭に置いて定められた数値でないため、杓子定規に1000ppm以上・以下ととらえるのではなく、それぞれの状況に応じた柔軟な解釈が必要」、「1つの目安として、このように極端に換気状態が悪い空間を作らないようにする努力が必要」と指摘している。(編集担当:久保田雄城)