2020年の世界の自動車市場は新型コロナ流行の影響を受けて大幅な減少となったが、二輪車については日本、米国、欧州など先進国では微増であったものの、新興国を中心にふた桁の大幅なマイナスになるなど世界市場全体としては減少傾向で推移した。
6月16日に矢野経済研究所が「世界の二輪車市場に関する調査」の結果レポートを公表しているが。これによれば20年の世界の二輪車市場は販売台数ベースで前年より993.7万台減少し、前年比15.2%減の5557万台となった。新型コロナの影響で各国とも消費マインドが冷え込み、インドネシアでは前年比43.6%減と大幅な減少となったほか、インド、ベトナム、フィリピン、タイなど主要国の市場でも前年比2桁マイナスを記録した。
一方、日本や米国、欧州ではコロナ禍でのソーシャルディスタンス確保やレジャーでの需要などで前年より微増となったが、先進国の世界内シェアは小さく、コロナ禍からの回復の牽引役とはなりえない。成長の駆動役となり得るのはインド、ASEANに加え、パキスタン、バングラデシュ、CLM諸国(カンボジア、ラオス、ミャンマー)、アフリカなど新興国である。
また、二輪車にもポスト排ガス規制やSDGs、電動車導入を推奨する政府目標などから、四輪車同様に電動化へのパラダイムシフトが訪れているようだ。二輪車でも電動化シフトが起こる要因としては、環境規制の強化があげられる。これまで二輪車はキャタライザーやECUのプログラム調整のみで、排ガス規制を越えてきたが、ポスト排ガス規制やICE(内燃機関)四輪車の販売禁止が協議されている2030年以降に向けて、二輪車も電動化への歩みを進めなくてはならない状況となってきているようだ。また、モビリティー・マネジメント(交通政策)や企業の社会的責任の観点からも二輪車の電動化が求められている。一方、ICE車との価格差や航続距離差、充電インフラの不足、趣味用途としての魅力減などが今後の課題だ。
世界人口の8割以上は二輪車の需要の高い新興国であり、新興国ではコストやインフラ整備の点からも電動自動車普及のハードルは高いものの、電動二輪車であればそのハードルが下がるため、今後は二輪車電動化の世界規模での広がりが期待される。こうした背景よりレポートでは30年の二輪車世界市場規模を6576万台と予測、電動化比率は最大約20%まで成長すると予測している。(編集担当:久保田雄城)