何故、日本のDXは失敗するのか。日本企業、プレゼンス喪失のワケ。経営層の戦略構築能力の欠如。~PwCレポート

2021年10月24日 09:04

画・何故、日本のDXは失敗するのか。日本企業、プレゼンス喪失のワケ。経営層の戦略構築能力の欠如。~PwCレポート。

PwCがレポート「DX時代において国内テクノロジー企業が本当に為すべきこと」。日本のプレゼンス低下の原因、戦略策定力が不足、ガバナンス体制・人事制度が未整備、リソース最適化の欠如。

 日本のIT投資の8割以上は失敗していると言われ続けてきた。その主要な原因はユーザー企業の要求定義能力の不足だと指摘されている。つまり、システムを運用するユーザー企業が自らの業務構造を分析せず、その分析に基づいたシステム導入の目的と目標を明確化させないため、導入システムが企業価値を向上させることが出来ず、維持管理コストだけが膨張し続ける結果を生む。言い換えればIT戦略策定能力の欠如だ。同様のことがDXで生じるという懸念は強い。

 9月30日にロンドンに本部を置くグローバル会計事務所のPwC(プライスウォーターハウスクーパース)の日本法人が連載レポート「DX時代において国内テクノロジー企業が本当に為すべきこと」の第1回として「日本のテクノロジー企業は、なぜグローバル市場でプレゼンスを失ったのか」を発表している。レポートは「DXというバズワードに踊らされ、DXを通じて実現したいビジョンが明確」でなく、「経営トップが覚悟を持ってDXにコミットせず」、「成果が上がらずに頭を抱える」経営者が続出しているのでは、と指摘する。

 日本企業は1990年代より急速にグローバルでのプレゼンスを喪失した。レポートはその要因について、次の3つの要因で説明する。1番目は「外部環境情報(マクロトレンド・競合動向)や自社ケイパビリティを踏まえた戦略策定力の不足」である。2番目は「大胆な意思決定を後押しするガバナンス体制・人事制度が未整備」であること。日本企業は短期的な財務リターンを重視し中長期的なビジョンが不足している。それは、革新的な意思決定能力を評価するトップ人事など中長期的な企業価値向上を見据えた人事制度が未整備なためと、レポートは分析している。3番目は「コアケイパビリティ強化に向けた十分な投資と、事業・地域をまたいだ経営リソースの適切な配分の欠如」で、技術力があってもモデル構築力に乏しいため、長期的に自社の強みを強化する投資とならず市場競争力を失う、と指摘している。

 DX推進は「DXで何を実現したいのか」という長期ビジョンの明確化が前提となり、その欠如は経営リソースを無駄にするだけとなる。特に「変化の大きいテクノロジー業界においては、『何が自社の競争優位の源泉となるのか』を改めて考え、自社のビジネスモデル再構築を進めなければならない局面に差し掛かっている」とレポートは指摘している。DX以前に戦略構築能力を向上させる人事体制の整備が必要なようだ。(編集担当:久保田雄城)