コロナ禍でIT投資が加速しているようだ。これまでもセキュリティ投資やWindows10への移行、クラウド化などで日本のIT投資は順調に拡大傾向で推移してきたが、2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で中堅・中小企業を中心にIT投資案件の中止や先送りが多発し、伸び率は大きく鈍化した。しかし、感染予防策としてのテレワーク実施の中でデジタル化の重要性が再認識され、半数を超える企業でデジタル化への取り組み状況が前進し、IT投資は今後も拡大傾向で推移する見込みだ。
11月18日、矢野経済研究所が「国内企業のIT投資に関する調査(2021年)」の結果レポートを公表しているが、これによれば、20年度の国内民間企業のIT市場規模は12兆9700万円と推計され、伸び率は前年度比0.6%の増加とほぼ横ばいであった。大企業では概ね計画通りにIT投資が実施されたものの、中堅・中小企業を中心にIT投資案件の中止や先送りをした企業も多く、全体として足踏み状態になったようだ。
コロナ禍での「デジタル化への取組み状況の変化」について尋ねた結果では(回答企業453社)、「大きく前進した」と回答した企業は9.7%、「やや前進した」が45.5%、両者を合わせると55.2%と半数以上の企業がコロナ禍で「デジタル化への取組みが前進した」と答えている。レポートは「テレワークの実施や事業活動のオンライン化等により、企業におけるデジタル活用が加速したと考える」としている。また、「変わらない」と回答した企業は41.3%で、これにはコロナ禍以前よりデジタル化を推進しているため「変化がない」と回答したものも含まれていると考えられる。「やや後退した」は2.4%、「大きく後退した」は1.1%と「後退した」企業は極めて少ない。
21年度のIT市場規模は、20年度に先送りされたIT投資案件の実施、デジタル化や事業変革の必要性を認識した企業によるIT投資の加速等を背景に、前年度比2.8%増の13兆3300億円と大きく回復すると見込まれている。22年度以降は伸び率では落ち着くものの、DXの活発化や、5Gの本格普及、データ利活用の推進を背景としたAIやIoTの普及、さらには働き方改革の推進等によりIT投資は堅調に推移する見通しで、22年度は前年比2.3%増の13兆6400億円、23年度は同1.8%増の13兆8800億円と予測されている。(編集担当:久保田雄城)