事業承継、「脱ファミリー化」加速。同族承継は減少、「M&A」が増加傾向

2021年12月17日 06:05

画・事業承継、「脱ファミリー化」加速。同族承継は減少、「M&A」が増加傾向。

帝国データバンクが「全国企業、後継者不在率動向調査」。2021年の「同族承継」の割合は38.3%、縮小傾向

 コロナ禍で中小企業の事業承継問題が改善傾向だ。背景には政府による事業承継支援策の存在もあるようだ。後継者不在の中、コロナ禍の業績不振で事業断念による廃業の増加も懸念され、M&Aマッチング支援などの円滑な事業承継に向けた政府のサポートが進んでいる。「同族承継」型の就任割合は減少傾向となっており、事業承継の「脱ファミリー」の動きが加速している。

 11月22日、帝国データバンクが「全国企業『後継者不在率』動向調査(2021年)」の結果レポートを公表している。これによれば、21年の全国約26万6000社における後継者動向は、後継者が「いない」または「未定」とした企業が16万社にのぼり、全国の後継者不在率は61.5%となった。これは昨年の不在率65.1%から3.6ポイントの大幅な改善で、調査を開始した11年以降で最小だ。11年から20年までは65%以上で推移しており、近年は18年に66.4%、19年に65.2%、20年に65.1%と減少傾向で推移してきたが21年は61.5%と大幅な減少となった。レポートでは「コロナ禍で事業環境が急激に変化するなか、高齢代表の企業を中心に後継者決定の動きが強まった」としている。また「地域金融機関を中心にプッシュ型のアプローチが徐々に成果を発揮し始めていること」、「第三者へのM&Aや事業譲渡、ファンドを経由した経営再建併用の事業承継など支援メニューが全国的に整ったこと」などが大幅改善の要因と分析している。

 21年の事業承継の形態をみると、「同族承継」が38.3%に達し全項目中で最も多く、「内部昇格」31.7%、「M&Aほか」が17.4%、「外部招聘」7.6%、「創業者」4.9%となっている。17年からの推移を見ると「同族承継」は17年の41.6%から減少傾向で推移している一方、「内部昇格」は17年の31.1%から横ばい、「M&Aほか」は17年の15.9%から増加傾向となっている。レポートでは「事業承継は同族間での事業引き継ぎから幹部社員などへシフト=脱ファミリーの動きが鮮明となっている」としている。

 後継候補が判明した約10万社の後継者属性をみると、「子供」が38.5%と最多だが、前年から1.9ポイント減少し、調査開始以降で初めて4割を下回り、「脱ファミリー」の動きが加速しているようだ。レポートは「コロナ禍という未曽有の危機において改めて自社の後継者問題に向き合った中小企業は多い」としている。(編集担当:久保田雄城)