来夏から海水希釈のALPS処理水でヒラメ飼育

2021年12月30日 06:09

 松野博一官房長官は28日、東電福島第一原発事故により毎日約140トン増え続けている放射性物質の汚染水を処理したALPS処理水(放射性物質トリチウムは含まれたまま)の処分に関する基本方針(海洋放出)の着実な実行に向けた関係閣僚ら会議で、行動計画を取りまとめたと発表した。

 松野官房長官は「8月に取りまとめた『当面の対策』を具体化したもので、風評を生じさせないための対策や風評に打ち勝つための対策などが盛り込まれている。今後、この計画をもとに、政府一丸となって、更に対策を進める」と述べた。

 政府行動計画は「今後も対策の進捗や自治体・団体の意見も踏まえつつ、随時、追加・見直しをしていく」としている。

 風評対策では「徹底した安全対策による安心の醸成」を図るとし「原子力規制委員会による原子炉等規制法に基づく審査やIAEAによるレビューを実施。中長期的に安全性の検証を継続する」。

 また「年度内に『総合モニタリング計画』を改定。その後、放出前の海域モニタリングや水産物モニタリングを開始。中長期的に、放出前後のモニタリング結果の比較等を実施し、広く公表する」。

 第3者による監視と透明性の確保へ「IAEAが処理水の安全性評価、分析機関の能力や規制内容の確認等を実施。22年中に中間報告書を取りまとめ。中長期的に放出前・中・後の全体に関与。評価結果やデータは国内外に透明性高く発信する」。

 風評抑制のための将来技術の追及として「5月以降、東電がトリチウム分離技術について公募調査を実施、12月に1次評価の結果を公表。今後、詳細な評価を実施。中長期的に可能性のある技術について追加的なデータ取得等を進める」としている。

 汚染水発生量が20年時点で日量140トンになっているが、25年内に100トン以下になるように発生量低減の取り組みを進める、としている。

 また来年夏ころから海水で希釈したALPS処理水によるヒラメなどの飼育を開始し、海水の環境下での生育状況と比較する計画。結果については透明性を高く、分かり易く公表するとしている。

 海洋放出を巡っては中国外務省・趙立堅副報道局長が「もし安全・無害というなら、なぜ国内の湖に放出したり、国内で循環利用したりしないのか」と強い懸念を示し、反対を主張。国際環境保護団体グリーンピースも「汚染水を薄めて放出しようと、放出方法を工夫しようと、環境中に放出される放射能の総量は変わらない」と指摘。

 また「トリチウムの半減期は12年だが、炭素14の半減期は5730年にもなる。放出が続く間、これらの放射性物質は海に蓄積され続ける」と放出すべきではない、と環境汚染、生態系への影響を危惧し、放出に強く反対している。(編集担当:森高龍二)