ホンダ・シビック・タイプR/シビック、ステップワゴンに内包するユーザーに寄り添う設計思想

2022年01月23日 10:38

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1159cc水冷直列4気筒SOHC、60ps/5500rpm、9.5kg.m/3000rpmを積んだ初代シビック ボディサイズは全長×全幅×全高3405mm×1505mm×1325mm、車両重量は600~640kg あれから50年経った

 2021年1月、ホンダ伝統の小型車「CIVIC(シビック)」がフルモデルチェンジを果たした。初代シビックの誕生は1972年、何と約半世紀も前のことだ。

 現行シビックは11世代に該当し、今年2022年に50周年を迎える。4種類ボディ・バリエーションの最後に登場する「タイプR」は、昨年末にプロトタイプの走行テスト写真が公開され、ニュルブルクリンクにてテスト走行の模様が紹介された。歴代最後のタイプRかもしれないという噂もあり、“異端のシビック”ファンのみならず注目すべきメーカーチューンド・モデルと云える。

 ところで50年以上前の1969年、ホンダのエンジン開発陣は苦悩していた。本田宗一郎は一貫してこだわってきた空冷エンジンを断念。米国排ガス規制法、マスキー法クリアを含め、水冷エンジンのメリットを認め、水冷エンジンの開発に動いたのである。最初にホンダ製水冷ユニットを積んだのは軽自動車のライフだったが、1.3リッター空冷で頓挫していた登録小型車用エンジンも水冷での開発が始まった。

 新しい水冷エンジンの開発は完全な白紙からはじまった。さらに、それを積む製品であるクルマそのものに、“世界に通用するクルマに!”という命題が与えられた。

 プロジェクトがスタートする。開発・設計は若手スタッフが中心になって進められ、それまで商品開発の陣頭指揮を執ってきた宗一郎は、設計から一歩引いたところに立っていたという。新型車の名前は「CIVIC」となった。

ボディサイズは全長3405mm×全幅1505mm×全高1325mm。搭載ユニットの最高出力は60ps、車両重量は600~640kgというスペックを見ると、ほぼ現在の軽自動車と同じような車格だったのだ。

 事実、軽自動車ライフをベースにボディサイズを決めたという。前後ホイールアーチの距離をライフと同じ設定とするコンパクトなクルマとしたのだ。つまり、フロントタイヤが収まる前輪ホイールアーチ後端から、後輪ホイールアーチ前端までの距離をライフと同じとしたのだ。ただし、ホイールベースはライフが2080mm、シビックが2200mmと120mmの違いがある。これは、装着タイヤが10インチの軽自動車と12インチのシビックの違いが生んだ軸間距離なのだ。

 搭載エンジンは、1159ccの水冷直列4気筒SOHCにシングルキャブレター仕様、60ps/5500rpm、9.5kg.m/3000rpmと,」エンジン屋ホンダとしては控えめな出力&トルクのユニットだった。そのエンジンは小さくコンパクトにまとめ、人間のためのスペースを最大限に確保することが優先された。この初代を以て既に「MM思想」が貫かれていたのだ。

 その後、1973年にシビックCVCCが発売された。その年はホンダ創業25周年で、10月に開催した記念式典で、開発の陣頭指揮をとってきた本田宗一郎社長、事務方の藤澤武夫副社長のふたりが、そろって退任を表明。その後、語り継がれ、ホンダの伝統となる経営トップの「良き引き際」が始まったのだった。

 そして今年、CIVICデビュー50年だ、初代シビックの目標は「世界で通用する国際商品」として認知され、走りでも「世界の高速化にも、余裕をもって対応できる性能と安定性の獲得」だった。そしてCVCCをはじめとしたメカがグローバルマーケットで評価され、高速走行に対応できるパフォーマンスという点においては、初代の精神は11代目となる新型にしっかりと受け継がれている。

 このほか、発売に向けて開発を進めている「CIVIC TYPE R」(シビック・タイプアール)の実車を初公開した。

 気になるタイプRのパワーユニットは、2リッター直列4気筒DOHCターボで、出力&トルクは320ps/40.8kg-m。従来型を踏襲するもトルク特性を改善し、鋭いレスポンスが得られている。

 そのホンダは2022年1月14日から16日まで幕張メッセにて開催された「東京オートサロン2022」に、1月7日のジャパンプレミアで初公開となったばかりの新型「STEP WGN」をベースとしたカスタムモデルを出展。

 細かな諸元については発売まで公表しないようだが、展示車を見る限り、スリークなボディは直線的に長く、ライバルと目されるトヨタ・ノアの全長が5ナンバーサイズに収まっているのと、対照的な“新しい大きさ”へのアプローチ、設計思想があり、初代が持っていた“道具感”を演出しているようだ。一方で、2ndシートにオットマンを備えるなど、内装はひとクラス以上のクオリティアップを感じさせる仕上がり。

 或る意味、ホンダの“人に寄り添う乗り物”への先祖返りの思惑が秘められたシビック、ステプワゴン、2台のモデルチェンジに思える。(編集担当:吉田恒)