世界で初めて、システムが運転を行なう、いわゆる「レベル3」相当の自動運転システム「Honda SENSING Elite(ホンダ センシング エリート)」を搭載した新型レジェンドを100台限定で販売開始した
2021年3月5日、本田技研工業は世界で初めて、システムが運転を行なう、いわゆる「レベル3」相当の自動運転システム「Honda SENSING Elite(ホンダ センシング エリート)」を搭載した新型レジェンドを100台限定で販売開始した。市販車とはいえ価格は1100万円と高額で、自動運転といえどもシステムが求めたときはドライバー自らの運転が必要になる「条件付き自動運転」ではあるものの、完全自動運転車の実現に向け、世界に先駆けた大きな一歩を踏み出した。
日本は欧米諸国に比べて自動運転分野で遅れていると思われがちだが、そうではない。2017年にアウディが世界初のレベル3システム搭載車と鳴り物入りで「A8」を発表したものの、実際には国内での法整備が追いついておらず、機能は実用化されずにお蔵入り状態になっているのだ。また、ホンダ以外の日本メーカーでも、スバルの「アイサイト」、トヨタ自動車の「Toyota Safety Sense」、日産自動車の「プロパイロット」など、レベル2の先進運転支援システム(ADAS)では、かなり高度で信頼性の高いシステムを開発し、搭載車両を増やしている。日本は決して、自動運転後進国などではない。しかも、今回のホンダの新型レジェンドによって、自動運転分野では国際的にリードできたことになる。
そして、そんな日本の自動車メーカーを支えているのが、日本の半導体企業の高度な技術力だ。自動運転で最も重視されるべきことは快適性や利便性ではない。安全性だ。一部でもシステムに運転を依存する以上、そのシステムに対しては絶対的な信頼性が求められる。ADASや自動運転には無数の半導体部品やセンサ、カメラなどが使用されているが、その中の一つでも不具合や誤動作が起これば、運転者や同乗者の命も脅かしかねない。とはいえ、機械部品である限りリスクは常に付きまとう。そこで、安全で安心なADASや自動運転の実現のためには、細かな部品一つ一つの性能や耐久性などに加え、もしもの可能性を極限まで低減させるための、監視装置や防護装置などの付加機能、いわゆる「機能安全」が必須の要素となるのだ。
数ある部品メーカーの中でも、この機能安全に早くから注力しているのが、京都の半導体メーカーのロームだ。同社は2014年から自動車向けの機能安全規格である「ISO 26262」の開発プロセス認証取得に向けて動き出しており、2018年には半導体メーカーとしていち早くドイツの第三者認証機関TÜV Rheinland(テュフ ラインランド)より認証を取得している。これにより、同社は自動車向けデバイスの開発プロセスが「ISO 26262」の最高レベルの安全度水準である「ASIL-D」まで対応可能と国際的にも認められたことになる。
今後の自動車における電子部品の技術革新を実現するために欠かすことができない機能安全の認証規格。部品レベルでの高品質の技術革新が進んでいる。
昨年10月に矢野経済研究所がまとめた調査結果によると、 ADASおよび自動運転用センサーの世界市場規模は2020年見込みで1兆1112億円。コロナ禍の影響による新車販売台数の落ち込みなどで数字が伸び悩んだものの、2025年は2兆4808億円に達する見通しだという。今後ますます加速するであろうADASや自動運転の流れの中、日本の自動車メーカーや半導体メーカーには安全性と信頼性の高い製品で、世界の自動車業界をリードしてもらいたいものだ。(編集担当:藤原伊織)