中小企業経営者の認知率は51%。日本のSDGsはどこへ向かうのか

2021年12月05日 08:25

画・SDGsマーケティング、8割の担当が「取り組むべき」。実施は3割のみ。定量化やノウハウが課題。

SDGsに詳しい人材の不足や、設備投資などの資金確保などが課題として挙がっている

 最近、耳にする機会も多くなった「SDGs」。しかし、日本での認知度はまだまだ低い。T&D保険グループの大同生命保険株式会社が実施している全国の中小企業経営者を対象としたアンケート調査「大同生命サーベイ」が2021年10月に発表したレポートによると、SDGsについて、「名称・内容ともに知っている」が51%と、2019年9月に実施された前回調査から38ptも上昇がみられたものの、約半数。さらに「SDGsに取組んでいる」と回答した企業については24%と、前回調査から14ptの上昇に留まり、大企業はともかく中小企業においては、未だ十分な取組みが行われていない現状が浮き彫りとなった。その理由としては、SDGsに詳しい人材の不足や、設備投資などの資金確保などが課題として挙がっている。

 とはいえ、中小企業の中でも積極的にSDGs経営に取り組む企業もある。木造注文住宅を手がける株式会社アキュラホームだ。

 同社は先般、 さいたま市に 「日本初」となる純木造ビルで新社屋を建設する仰天計画を発表し、大きな話題を呼んでいる。同社が構想する新社屋は、特殊技術や特殊部資材を多用せず、日本で最も普及している木造軸組み工法の製材、プレカット加工技術などの生産システムを使った「普及型純木造ビル」で、これをプロトタイプとして全国に「木造ビル」を普及させていく構想のもとでプロジェクトを進めている。

 純木造ビルはこれまで、費用面や耐久面などのさまざまな理由で普及が難しいとされてきたが、同社の新社屋がこれを切り拓くプロトタイプとなれば、木造建築業者はもとより、日本の林業などにも新たな可能性が拓けることになるのではないだろうか。

 建設予定地である、さいたま市もまた 「スマートホーム・コミュニティ」の普及に向けて先導的モデル街区 の街づくりを進めるなど、全国の自治体の中でも積極的SDGsを推進している自治体だ。日本経済新聞のSDGsの観点で全国 815 市区を対象に行われた「全国市区・SDGs先進度調査」でも首位を獲得している。実は、アキュラホームはもともと埼玉県で創業した企業であり、ゆかりの地。これも奇縁というものだろう。

 アキュラホームはこれまでにも、地元である埼玉県住まいづくり協議会で長年中心的に活動するなど、 埼玉県やさいたま市など 行政の住宅政策にも積極的に協力してきた。直近では、11月22日に「カンナ社長」こと同社の宮沢俊哉社長がさいたま市の清水勇人市長を訪問。新社屋の建設計画について報告するとともに、間伐材を利用した「木のストロー」や、小学校学習用机の天板を寄贈する 「木望の未来プロジェクト」など、同社がかねてより取り組んでいるSDGs活動を紹介。清水市長と宮沢社長の両氏は、今後もさいたま市の強いリーダーシップのもと、 SDGsの取り組みへの協力と連携を約束している。

 SDGsといえば何か難しいことや環境問題改善策のようにとらえている人も多いようだが、そうではない。SDGsが掲げる17の目標と169のターゲットは、自分たちがより暮らしやすい未来をつくるためのものだ。そのために、政府だけでなく、企業も個人も、それぞれができることを出来る範囲で意識してやっていく。決して、特別な何かや新しい何かが求められているわけではないのだ。

 日本のSDGs最先端のさいたま市で、日本古来の在来木造工法で建造される日本初の純木造ビルは、日本のSDGsのランドマークになるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)