2011年3月に20mを超える巨大津波が東北太平洋側沿岸を襲った。「1000年に1度の巨大津波」とも言われているが、東北太平洋側沿岸、特に三陸沿岸部は過去に何度もの大津波に襲われている。日本海溝沿いで発生する巨大地震津波は、2011年東北沖津波、1454年享徳津波、869年貞観津波などの観測から周期は約500年間隔とする説もあったが、津波堆積物の調査から三陸海岸における巨大津波発生間隔は従来の想定より不規則で、さらに過去数百年間は100~200年周期とより高頻度で巨大津波が発生していたことを示す物的証拠が確認された。
東北大学災害科学国際研究所を中心とする東大、北大の研究グループが、三陸沿岸地域において津波堆積物を含む地層をミリ間隔の高密度で年代測定を行い、新たな手法でこれまで認知されていなかった津波の履歴を復元、この研究成果が2月2日に「Quaternary Science Reviews」誌に掲載された。この研究の結果、三陸海岸北部の岩手県野田村の地層から、1611年慶長奥州津波由来の堆積物を発見、一方、同地層には1454年享徳津波による堆積物は含まれないことも確認し、1454年の享徳津波の可能性については否定された。これにより、三陸海岸北・中部における巨大津波発生周期は従来の説よりも不規則かつ短いことが示唆された。
今回、物的証拠が発見された地層の位置から1611年の慶長奥州津波は最大高さ30m以上にも及び、2011年の東北沖津波や1896年の明治三陸津波と同規模の巨大津波であったことが判明した。日本海溝沿いで発生する巨大地震津波の周期は2011年の東北沖津波、1454年の享徳津波、869年の貞観津波から約500年間隔とされていたが、本研究からその発生周期は2011年東北沖津波、1611年慶長津波、869年貞観津波と不規則であり、1896年の明治三陸津波は揺れが小規模でも津波を引き起こす津波地震であるが、これも考慮すると、三陸海岸では過去400年間に高頻度で巨大津波が発生しており、869年貞観津波以前はおよそ500年間隔で津波が発生していたのに対し、1611 年慶長奥州津波以降は100~200年周期とより短い周期で巨大津波が発生している可能性が示された。
三陸で多い津波地震や1960年のチリ地震津波、1月のトンガ火山噴火のように外国由来の予期できない津波もある。津波警報システムの拡充が望まれる。(編集担当:久保田雄城)