コロナ禍で世界の自動車市場は大幅に落ち込んだ。その中でも欧州を中心にEV(電気自動車)へのシフトが大きく進展した。コロナの影響による停滞から回復し始めたものの、昨年より半導体不足か顕在化し再び自動車市場は販売・生産ともに停滞することとなる。こうした状況下の3月1日、自動車部品大手のマレリ・グループの5社がADR(裁判外紛争解決手続)を申請した。マレリは電動化ヘ向け積極的に投資を行ってきたが、コロナと半導体不足による完成車減産の長期化により事実上破綻しADRによる再生を目指すことになったようだ。マレリに限らず自動車部品業界はコロナ禍の市場停滞の中で電動化シフトのための研究開発投資を迫られ、厳しい経営環境下に置かれている模様だ。
3月3日、帝国データバンクが「自動車部品メーカー業界調査」の結果レポートを公表している。これによれば、自動車部品業界は完成車メーカーの海外販売好調を受け順調に拡大し、2018年度には売上合計21兆9060億円、利益合計6712億円に達した。しかし、2020年度はコロナの影響もあり一転、売上合計は前年度比で約2割急減の17兆1687億円まで縮小となった。今年度もコロナの影響と半導体不足で完成車の減産が長期化していることに加え、鉄・銅・アルミニウムなど資材価格が高騰し利益面でも改善の見通しがつかない状況だ。
帝国データバンクが保有するデータベースの中の部品メーカー約2000社のうち事業内容に「EV」、「電気自動車」の記載が見られる企業は約7.3%の157社にとどまり、EVシフトに対応できている企業は1割にも満たないようだ。自動車部品サプライヤーの研究開発費の売上高に占める割合は近年増加傾向で、15年度に1社平均6.6億円であった研究開発費は、19年度には8.5億円にまで急増している。20年度は業績悪化を背景に6.9億円と大きく減少しているが、レポートでは「年々重たくなる研究開発負担が利益を下押ししている可能性もあり、必ずしも収益性向上に結び付いているとはいえない」と分析している。
EUは35年にガソリン車の販売を事実上禁止すると発表しており、米国も30年に新車販売に占める電動車の割合を50%に高めるとしている。日本政府も35年までに新車販売の全てを電動車にする方針を示している。部品メーカーのEVシフトは生き残りに必須であるが、その為の研究開発費が利益を圧迫する。今後はEV化対応できない中小メーカーが顕在化し「サプライヤーの淘汰や再編が進む可能性もある」とレポートは見込んでいる。(編集担当:久保田雄城)