ロシアのウクライナ侵攻後、日本政府は西側諸国と歩調を合わせ直ちにSWIFT制裁への参加を表明し、その後も次々と追加的な制裁を発表している。ウクライナ情勢は長期化するとの見方もある中で、ロシアに対する経済制裁はロシアと取引のある日本企業や二次取引、サプライチェーンなどにも負の影響を与え、品不足や価格高騰を通じて小売、消費者レベルまで影響が及ぶと懸念されている。追加制裁で半導体などのハイテク製品、工作機械など軍事転用可能品目について輸出が禁止されているが、輸入品目では木材などが輸入禁止となっており、建築用合板の品薄が危惧されるなど、既に一部では供給網に支障が生じ始めているようだ。水産品については今のところ禁輸は見送られているものの、長期化が懸念される中、今後の動向は流動的だ。
4月6日、帝国データバンクが「日本企業のロシア貿易状況調査」の結果を公表している。これによれば、在ロシアの企業と直接取引を行う日本企業数は3月現在で国内に338社が確認され、こうした直接輸出入企業と取引をしている企業は1万4949 社が判明している。両者を合わせるとロシアと直接・間接的に取引関係のあるサプライチェーンは全国で1万5287 社に上ると推計される。輸出・輸入別に見ると輸出関連が1万975社、輸入関連が4614社となっており、7割超が輸出関連で、自動車関連では10数万台を超えるロシア向け需要が当面の間消失することになるなど国内経済に与える影響は大きいようだ。輸入面でも調達品目の価格が高騰しエンドユーザーまで品薄などから価格高騰が連鎖する可能性も考えられる。
「サプライチェーン上密接な関係にある」企業は286社と「概ね関係がある」4367社を合わせると4653社となり全1万5287社の内の30.4%を占め、対ロ貿易制限等の国内への影響は決して小さくはないと予想される。直接または2次的に仕入をロシアからの輸入に頼っている業種を見ると「木材・竹材卸売」が138社、「木造建築工事」80社などと木材関連が上位に来ており、今後は製紙や建築用木材などの関連業種にも影響が広がることも懸念される。また「生鮮魚介卸売」も121社と多く、国内消費でロシア産の割合が高いタラの卵やウニなどを中心として既に品薄などの影響が出始めており、今後はスーパーなどの小売店、飲食店、消費者レベルまで影響が広がる可能性も否定できない。(編集担当:久保田雄城)