日産、EVの必須要件、全固体電池実用化に向けた研究開発加速 試作生産設備を公開

2022年04月13日 06:57

Nissan Battery

日産自動車は先般、電気自動車(EV)向け次世代型バッテリーの有力候補である「全固体電池」の試作設備をオンラインで世界初公開した

 日産自動車は先般、電気自動車(EV)向け次世代型バッテリーの有力候補である「全固体電池」の試作設備をオンラインで世界初公開した。EVの普及に向け、航続距離が大幅に伸びる全固体電池を巡って、自動車メーカーやサプライヤー、電機業界各社の開発競争が激しさを増している。なかで国内EVトップを自認する日産は、以前から2028年度に全固体電池を用いたEVを量産化する目標を掲げ開発を急ぐ。

 全固体電池はリチウムイオン電池を引き継ぐ次世代電池として注目されるようになった二次電池だ。全固体電池は従来の電池と異なるいくつかの特性を持ち、リチウムイオン電池を超える性能を持つとされる。すでに一部実用化されており、10年以内にEVへの搭載が始まり、定番に育つといわれる。

 そもそもバッテリーは大きく「電極」「活物質」「電解質」で構成され、活物質や活物質に含まれるイオンが電解質の中を動くことで電極間(負極から正極の間)に電子を通し電気を発生させる仕組みだ。すなわち、「イオンが素早く動くような特性」の電解質を持った電池ほど高性能といえる。

 全固体電池とは、端的に言うと電流を発生させるために必要だった「電解質」を液体から固体にした仕組みの電池だ。

 従来のリチウムイオン電池など液体電解質の電池は、外気温が氷点下になる寒冷地などで電解質が凍るなどすれば、電気エネルギーの移動がスムーズに行なえなくなって電気が流れなくなる副反応に苛まれ、極端な場合能力の半分以下しか発揮できない事態に陥る。

 全固体電池は電解質に液体ではなく固体を使う次世代型の電池だ。液体を使った電池に比べて副反応が少なくなるなど電池の性能が上がるため、給電量が倍に伸びる(EV走行距離が倍になる)エネルギー密度を持ち、さらに充電時間は3分の1に短縮できる基本性能の高さが自慢だ。

 日産は神奈川県横須賀市にある総合研究所で、全固体電池の試作を行なっている。日産は昨年発表した長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」において、2028年度までに自社開発の全固体電池を搭載したEVを市場投入することを目指し、同電池の量産化に向けたパイロットラインを2024年度までに横浜工場内に設置する予定。

 実用化に向けて米航空宇宙局(NASA)など外部との連携も進めているという。説明会で中畔邦雄副社長は「我々が公表している時期で実現できれば、グローバルでも競争力が相当あるポジションになる」と述べている。(編集担当:吉田恒)