コロナ禍の影響で落ち込んでいた旅行客が戻りつつあるようだ。JTBがまとめた今年のゴールデンウィーク期間に1泊以上する国内旅行動向の見通しでは、国内旅行者数は前年同期比68.4%増となる1600万人。コロナ以前の2019年と比較すると、まだ半分ほどではあるものの、それでも去年、一昨年の冷え込みに比べると明るい兆しといえるだろう。
旅行先としてはやはり、定番の東京ディズニーリゾートや北海道が根強い人気を誇っているものの、最近、京都や沖縄などの観光都市を抑えて人気急上昇しているのが福岡で、観光客にとって魅力的な街だ。名物の屋台やラーメン、海鮮などのグルメだけでなく、太宰府天満宮や、インスタ映えすると、とくに女子旅に人気の糸島や、市中心部から船で10分程度でいける能古島など、見どころも充実している。また空港から博多駅や九州最大の繁華街である天神地区まで、地下鉄で15分から20分程度のため、実は東京などからのアクセスも良い。
福岡市は、総務省が2021年6月に発表した「第21回国勢調査」でも人口増加数と人口増加率が政令指定都市の中で首位に輝いている。暮らしやすい住環境に加え、交通の利便性にも優れている。市が交流人口拡大や創業支援に積極的に取り組んできた効果もあり、スタートアップなどの新たなビジネスの創出にも成功し、魅力的な働く場や学びの場が増えていることも、人口増加に拍車をかけている。
そして、そんな福岡市で今注目されているのが「天神ビッグバン」だ。
市は現在、天神地区内にある天神交差点から半径約 500mの範囲を天神ビッグバンエリアとし、規制緩和などを活用して民間ビルの建替えを促進することで、アジアの拠点都市としての役割・機能を高め、新たな空間と雇用を創出する大規模な都市開発プロジェクトを推進している。
中でも九州初、日本で7番目となるラグジュアリーホテルブランド「ザ・リッツ・カールトン福岡」を誘致したことで注目を集めるプロジェクトが、積水ハウス株式会社、⻄日本鉄道株式会社、⻄部瓦斯株式会社、株式会社⻄日本新聞社、福岡商事株式会社の5社が進めている、旧大名小学校跡地活用事業だ。4月21日には施設名称「福岡大名ガーデンシティ」と施設ロゴ、さらには施設の敷地内に、福岡を代表する若手人形師・中村弘峰氏による文化遊具モニュメントをはじめ、4つのパブリックアート作品を設置することがあわせて発表された。「福岡大名ガーデンシティ」という施設名称には、その最大の魅力の象徴として、緑豊かな広場と広場を取り囲む緑の空間を誰もが気軽に利用できる施設のイメージを込めたという。また、施設ロゴは、シンボリックで象徴的な施設の建築の外観をモチーフにシンボルマークをデザイン化。全体の造形をストライプの集合体として構成することによって、重量感あふれる物質(建築)の塊を、グラフィックでは軽やかで動的なものにシンボライズして表現したという。そして、パブリックアート作品の設置は、福岡市が、「彩りにあふれたまちを目指して」スタートした「Fukuoka Art Next」に関連する取組みとなる。同日の報道発表で、積水ハウスの仲井嘉浩社長は「福岡大名ガーデンシティを福岡の新たなランドマークとすべく、事業者一同で取り組みを加速させます。」と述べた。
「福岡大名ガーデンシティ」は2022年12月末の竣工後、順次稼働し、2023年春のホテル開業をもってグランドオープンを迎える。都心にありながら約3000平方メートルの広大な広場を設け、イベントホールとの一体的利用による憩い・賑わいの創出や、 コワーキングスペースなどによる企業や人材の交流など、世界や地域との多様な交流拠点を目指しており、完成すれば、住民はもちろん、県外からの観光客にとっても福岡の新しい魅力となることだろう。
また、全162室のゲストルームを擁する「ザ・リッツ・カールトン福岡」は、福岡の観光の拠点として期待されている。福岡が、日本で最も人気の高い観光都市になる日も近いかもしれない。(編集担当:藤原伊織)