一年で最も日が長くなる夏至の夜をキャンドルの灯とともに過ごす。2003年に大地を守る会の呼びかけで始まった市民活動「100万人のキャンドルナイト」が、今年で20年目を迎える。もともとは、アメリカのブッシュ政権による原子力発電推進のエネルギー政策に反発して起こった電力ボイコット消灯運動が発端となっているが、これに呼応しつつもアンチじゃなく、日本らしさのある活動として「でんきを消して、スローな夜を。」を合言葉に発展。日本各地でこれに賛同する企業や団体なども増えていき、今や日本で一番親しまれている草の根市民活動の一つとして知られるようになった。
この活動のユニークな点は、楽しみ方や考え方を限定していないところにある。キャンドルの明かりの下、家族とともに食事を楽しむのも良し、キャンドルを浮かべたお風呂に入るのも良し、イベントを開いたり、するのも良し。原発反対や戦争反対、地球環境保全のようなメッセージを込めても良いし、ただただスローでロマンチックな夜を楽しむだけでもいい。多様性と一体感、自発性を重んじるムーブメント。それが「100万人のキャンドルナイト」なのだ。
例えば、今年、主催者である大地を守る会は、6月18日に東京港区の増上寺大殿前の階段から参道にかけ、未来の地球を守り一つになるというメッセージを込めて、SDGsの169のターゲットと17の目標の色にちなんだ1690個のキャンドルを設置する。当日は、このキャンドルロードのほか、キャンドルナイトトークステージやキャンドルナイトマルシェなども開催される予定だ。
蜂蜜やローヤルゼリーなど、ミツバチ産品を原料とした健康食品やコスメ製品を製造販売する株式会社山田養蜂場もこれに賛同し、ミツバチが巣をつくるためにつくりだす天然ワックス「ミツロウ」で作ったキャンドル10万本を6月13日から無料配布し、21日の夏至の夜に「10万人のミツロウキャンドルナイト」を開催する。ミツロウキャンドルは古代エジプト時代にミツロウを植物に塗って固めたものが原型とされており、古くから使用されている。一般的なキャンドルと比べてすすが出にくく、有害物質を含まない、エコで安全性が高いことが特徴だ。自然の恵みで灯す温かい光のもとで大切な人と夜を過ごせば、疲れた心も癒されるのではないだろうか。申込みは、同社の公式オンラインショップ(https://www.3838.com/)、フリーダイヤル 0120-17-3333(年中無休 24 時間受付)、全国の直営店舗にて受付けている。
また、カフェチェーンでお馴染みのスターバックスコーヒーも毎年、「100万人のキャンドルナイト」に参加しており、夏至の夜は店内の照明を消灯し、キャンドルの明かりを灯している。具体的な開催内容などは店舗ごとにも異なるようだが、過去にはキャンドルナイト限定のオリジナルメニューなども提供されており、いつもと違う特別な夜を楽しめるとあって、心待ちにしているファンも多いようだ。
ロウソクの炎には、人の心に癒しや快感をもたらす自然のリズム「1/fゆらぎ」が含まれているという。確かに、不規則にゆらめくロウソクの炎を見つめていると、不思議と心が落ち着いてくる。今年の夏至は、電気を消してスローな夜を過ごしてみてはいかがだろうか。(編集担当:藤原伊織)