岸田文雄自民党総裁(総理)は10日の参院選での自民党圧勝を受けて、党是でもある憲法改正について民放番組で「できるだけ早く発議し、国民投票に結び付けていく」とのこれまで以上に加速させていきたい姿勢を示した。
岸田総裁は「改正については、具体的な中身で(衆参議員の賛成が)3分の2集まらないといけない」と、改憲へ議論を押しすすめていく必要を強調した。
自民党は改正に関して「憲法9条(戦争の放棄)」に自衛隊を明記することや「緊急事態条項」創設を求めている。
自衛隊明記に関しては、静岡県弁護士会が強く警鐘を鳴らしてきた。理由を分かり易くまとめているので、一部を紹介したい。同会は「現行の安全保障関連法制のもとでの自衛隊について「従来の政府見解のもとで憲法9条2項の『戦力』に当たらないとされてきた『自衛のための必要最小限の実力』という枠組みを飛び越えた存在となってしまったものであり、集団的自衛権の名のもとに、我が国の外で他国軍隊と一体となって武力行使を行うことが可能となった存在である」と指摘。
そのうえで「このような自衛隊を憲法に明記することは憲法9条2項の戦力不保持の例外として集団的自衛権をも行使しうる自衛隊を明記するものに他ならず、また『後法は前法を破る』という法の一般原則によっても、憲法9条2項の戦力不保持規定は実質上死文化する」。
自衛隊明記案は自由民主党が『これまでと何も変わらない』と言っているようなものではなく。憲法前文と9条1項2項で構成されてきた日本国憲法の恒久平和主義という基本原理を根底から覆すものであって、このような日本国憲法の基本原理に反する改正は憲法改正の限界を超えるものとして許されないというべきである」と明言している。
また自衛隊明記案は自衛隊の『最高の指揮監督者』は『内閣の首長たる内閣総理大臣』とされているから、国会や内閣、最高裁判所などと同様に、自衛隊を憲法上の極めて重要な機関に位置づけるということを意味する。自衛隊を憲法上の極めて重要な機関とするのであれば、その基本的な権限、実力行使の限界や統制についても憲法上明確にされなければならないが、自衛隊明記案は自衛隊に対する統制は『国会の承認その他の統制』とするのみで、自衛隊の基本的な権限すらも規定されず、その権限は憲法ではなく、法律の規定に委ねられている。特に自衛隊明記案では『必要な自衛の措置』は憲法9条に妨げられないとされているため、自衛隊は『必要な自衛の措置』とされれば憲法9条の制約を受けることなく、今まで以上に他国と共同した集団的自衛権その他の武力行使が可能となり、そのための様々な装備の拡充が可能となる。必要な『最小限の』自衛の措置ですらない」としている。
結論として「自民党の自衛隊明記案は権力の行使を憲法に基づかせ、国家権力を制約し国民の権利と自由を保護するという立憲主義にも違背することにもなる」と警鐘を鳴らしている。(編集担当:森高龍二)