帝国データバンクのレポート(6月3日)では、「値上げラッシュ」は夏以降に本格化し、今年中の飲食料品の値上げ率は主要食品メーカー105社の平均で13%となっている。さらに細分化されたデータを見ると、加工食品では今年中に15%を超える勢いで、また、酒類・飲料でも平均値上げ率は15%となっている。この他、エネルギー価格上昇に伴い電気代などの通信・光熱費など生活必需品・サービスで大幅な値上がりとなっており、政府統計では電気代は20%もの増加となっている。商品・サービスの値上げは生活者の消費負担を増大させるもので、消費支出に対する税金が増加したのと同じだ。
7月4日に日本総研(日本総合研究所)が定例レポート「リサーチフォーカス」で「物価上昇の打撃を受ける引退世帯の消費。~低所得世帯ではコロナ貯蓄の恩恵も限定的~」というレポートを発表している。これによれば、コロナ禍で退職した高齢者世帯(引退世帯)の消費性向が大幅に低下しており「コロナ貯蓄」とでも呼べる貯蓄が生まれている。一方、現在「値上げラッシュ」の状況にあるが、引退世帯が直面する物価上昇の負担は大きく、総研の試算によれば、物価上昇による2022年度の負担増額は引退世帯の平均で7.2万円にのぼり、所得との対比でみた負担感は勤労者世帯よりも大きくなっている。このため「引退世帯では、コロナ貯蓄が積み上がっているとはいえ、物価上昇負担増を相殺する力は限られる」とインフレによってコロナ貯蓄の反動的な消費購買力は弱められているとレポートは指摘する。
また「足元の物価上昇は、実質的な資産価値の目減りや年金給付額の減少を招いており、財産や収入の面でも引退世帯は大きなマイナス影響を受けている」とも指摘している。このように、「物価上昇で困窮する世帯も引退世帯に多いとみられ、それを的確に見極め支援の手を差し伸べる必要がある」としているが、上で指摘されたことは所得が限られた低所得者層すべてに該当することだ。
政府が円安インフレに対し十分な対応が出来ない背景には、膨大な財政赤字とこれをファイナンスする過剰なマネーストック(貨幣供給)があるが、これは政府赤字を賄うために、エンゲル係数などで表わされるような、生活必需である食料品等の負担が大きい層に、より高く逆進的に消費課税をすることと同じである。レポートも指摘するように止まらぬ円安によるインフレの中、低所得層への救済策が何よりも期待される。(編集担当:久保田雄城)