急激な円安の動きは、6月に入り落ち着きを見せ、135円近傍を緩やかに上昇傾向で推移している。しかし、長期化するウクライナ情勢や上海ロックダウンの影響も残り、供給網は未だ混乱の中にありエネルギーや原材料価格の上昇傾向は落ち着く気配を見せない。日米欧の金利差も今後拡大傾向で推移すると見込まれ、企業は長期的なコスト上昇を期待しているものの十分な価格転嫁ができずに利益を圧迫されている現況で、今後も中長期的に「値上げラッシュ」が持続すると想像される。
6月30日、帝国データバンクが「『食品主要105社』価格改定動向調査(7月)」の結果レポートを公表しているが、食品メーカー各社の値上げ計画は今後さらに増加する見込みだ。レポートによれば、これまでは小麦・油脂の世界的な価格高騰や原油価格の高騰に伴う物流費や包装資材などの値上がりが飲食料品値上げの主な要因となってきたが、夏以降の値上げ計画では、こうした要因に加え、急速な円安による輸入コスト急騰をカバーする目的での値上げが目立ってきている模様だ。
企業は130円/ドル台を期待した値上げ計画となっているようだが、米FRBの利上げ等、海外の状況で状況は大きく変わる可能性もある。6月末時点で判明している値上げ計画のみで22年内の値上げは1万5257品目にも及び年内に2万品目超もありうる勢いだ。6月までの6451品目と7月予定の1588品目を加え、8月以降は秋に向けて7218品目が値上げ予定だ。レポートでは「『値上げラッシュ』が夏以降、本格化する見込みだ」としている。8月には1カ月内に2000品目超えのこれまでに無い規模の値上げが予定されており、「『値上げの夏』の様相を呈してきた」として「秋以降も止まる気配は見られず」としている。
現在判明している値上げ計画では、10月の単月3000品目超が最大となっている。企業が挙げている値上げ要因は「原油高に伴う包装資材や容器、物流費の高騰、加えて急激な円安による影響」となっており収まる兆しはない。これまでは、エネルギーや原材料の高騰が値上げ要因だったが、今後は円安、原油高による輸入、物流コストの上昇へと要因がシフトしてきており長期化の様相を呈している。
値上げ率の平均は食品メーカー全体で13%であるが、6712品目と構成比の大きい加工食品では15%を超え、さらに上昇する勢いだ。また酒類・飲料品でも平均値上げ率が15%になるなどウエイトの大きい部門での高い上昇率が目立つ。8月からは、円安輸入コスト上昇の転嫁による値上げが目立つが、麦芽やトウモロコシ高騰を受け10月からはビールその他の飲料に広がりを見せている。(編集担当:久保田雄城)