岸田文雄総理はNPT(核兵器不拡散条約)運用検討会議に日本の総理として初めて出席。1日の一般討論演説では冒頭に「ラウビネン議長、私は今回のNPT運用検討会議に強い危機感を持ってやって参りました」と表明した。
そのうえで、国連に1千万ドルを拠出し「ユース非核リーダー基金」を設け、未来のリーダーを日本に招き、被爆の実相に触れてもらい、核廃絶に向けた若い世代のグローバルなネットワークを作っていくとしたほか、核兵器の削減に向けた米露間対話の支持、核軍縮・軍備管理に関する米中間対話を後押しする考えを強調した。
岸田総理は「外務大臣として参加した2015年会議の決裂以降、国際社会の分断は更に深まっている。特にロシアによるウクライナ侵略の中で核による威嚇が行われ、核兵器の惨禍が再び繰り返されるのではないかと世界が深刻に懸念している。核兵器のない世界への道のりは一層厳しくなっていると言わざるを得ない」と懸念を示した。
そのうえで「いかに道のりが厳しいものであっても、核兵器のない世界に向け、現実的な歩みを一歩ずつ進めていかなくてはならない。その原点がNPTだ」と呼び掛けた。
岸田総理は「NPTは軍縮・不拡散体制の礎石として、国際社会の平和と安全の維持をもたらしてきた。NPT体制を維持・強化することは国際社会全体にとっての利益」と訴えた。
岸田総理は核兵器のない世界に向けた現実的なロードマップとして5つの柱からなる「ヒロシマ・アクション・プラン」を示した。
(1)核兵器不使用継続の重要性の共有(2)核兵器国の核戦力の透明性向上=核兵器国は核兵器用核分裂性物質の生産状況に関する情報開示をすること(3)核兵器数の減少傾向を維持すること=現在も1万数千発の核兵器が残っている。日本は削減に向けた米露間対話を支持し、核軍縮・軍備管理に関する米中間対話を後押しする。CTBT(包括的核実験禁止条約)やFMCTの議論を呼び戻す。CTBTの発効を促進する機運を醸成すべく、9月の国連総会に合わせ、私はCTBTフレンズ会合を首脳級で主催する。FMCTの交渉の早期開始を改めて呼びかける。
(4)核兵器の不拡散を確かなものとし、原子力の平和的利用を促進する=日本は2011年の(東京電力福島第一原発)事故の教訓を基に、被災地復興や廃炉に関連する様々な課題に取組む。国際原子力機関はじめ国際社会と協力し、内外の安全性基準に従った透明な取組みを進める。
(5)各国の指導者等による被爆地訪問の促進を通じ、被爆の実相に対する正確な認識を世界に広げていく。グテーレス国連事務総長が6日に広島を訪問することを歓迎する。「核兵器のない世界」に向けた国際的な機運を高めるため「国際賢人会議」の第1回会合を11月23日に広島で開催する。2023年には被爆地である広島でG7サミットを開催。核兵器の惨禍を二度と起こさないとの力強いコミットメントを世界に示したい、とアピールした。(編集担当:森高龍二)