読書は心を育み、認知症リスクの低下にも。全国で拡大するブックスタート事業

2022年12月18日 10:34

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ブックスタートとは、0歳児検診などの機会に絵本をプレゼントして、赤ちゃんと保護者が絵本を通じて心をふれあわせるきっかけを届ける活動

あなたは毎月、何冊くらい本を読んでいるだろうか。文部科学省の調査によると、日本人の平均読書量は年間12、13冊程度。月平均で1冊程度だという。しかし、年代別の平均読書量をみると小学生が7.5冊、中学生が2.5冊、高校生が1.5冊となっており、成人してからはほとんど読んでいないことが推測できる。

 統計分析を行う株式会社アイスタットが実施した、活字離れに関するインターネットアンケート調査でも、対象となった20歳から59歳の男女の一ヶ月の読書量は「0冊」が最も多く、47.3%を占めている。また、同調査では幼い頃に絵本や本を読む習慣が「なかった」と答えた人も、ほぼ同率の46%となっており、幼少期の読書量が成人後の読書量にも少なからず影響を与えていることが伺える。

 世界的にみても日本人の読書量は少ないといわれているが、そもそも読書は必要な習慣なのだろうか。読書は読解力や思考力を高めるだけでなく、脳の繋がりを強化し、認知症リスクの低下にもつながるという。また、ストレスレベルを下げ、身体的にも精神的にもリラックス効果があることも近年の研究で明らかにされている。つまり、読書は健康面でも有益なのだ。
 
 幼い頃からの読書習慣を促すため、自治体や企業でも様々な取り組みが行われている。

 例えば、全国でも6割以上の自治体が実施している「ブックスタート事業」をご存じだろうか。ブックスタートとは、0歳児検診などの機会に絵本をプレゼントして、赤ちゃんと保護者が絵本を通じて心をふれあわせるきっかけを届ける活動だ。1992年にイギリスから始まったこの活動は、世界で2か国目の活動国として、日本でも2001年から12市区町村でスタートし、現在では1099もの自治体で行われるまでに拡大。赤ちゃんに絵本をひらく楽しい「体験」と「絵本」をプレゼントしている。また、絵本の配布のみを行う「赤ちゃんへの絵本贈呈事業」も含めると、全自治体の約8割となる1424の自治体で実施されているのだ。

 そんなブックスタート事業に賛同する企業もある。毎年、「ミツバチの絵本コンクール」などを開催し、絵本を通じて子どもたちの心の教育に力を入れている株式会社山田養蜂場は、「ブックスタート事業」の『絵本を通じて赤ちゃんと保護者がふれあいの時間をもち、子供の健やかな心を育む』という活動の趣旨に賛同し、2002年からこれまでに、地元の岡山県鏡野町や津山市へ計19130冊の寄贈を行っている。今年は、絵本「にじいろのはちみつ」700冊を津山市に寄贈。「にじいろのはちみつ」は、「ミツバチの絵本コンクール」で一昨年(第4回)ストーリー部門の最優秀賞を受賞した、当時4歳の男の子が作った物語を絵本化したオリジナル絵本だ。11月30日には津山市役所において寄贈式が行われた。

 読書や読書量に関するアンケートなどの結果を見てみると、「忙しい」や「時間が無い」などを理由に読書をしない大人たちが多いことがわかる。でも、スマホを見る時間があれば1日10分ぐらい、子どもたちとともに絵本や本を読む時間はとれるのではないだろうか。そのたった10分の読書の時間がきっと、子どもたちの心を育み、大人たちの心を癒してくれるはずだ。(編集担当:藤原伊織)