鹿島<1812>が、千葉県銚子沖約3kmの海上に建設を進めていた日本で初めての着床式洋上風力発電設備を完成させたと発表した。風車は海面から高さ126m、ローター径92mで、定格出力は一般家庭1200戸分となる2400kW。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による洋上における風力発電の実証研究に基づくもので、今後約2年間、風向きや風の強さと発電量の関係などの調査が進められるという。
日本においても導入が進み始めた風力発電。しかし、陸上では適地が減少し、騒音等の影響も無視できないことなどから、長い海岸線や世界6位の広さを誇る排他的経済水域(EEZ)を活かした洋上風力発電の導入が期待されている。欧州では既に多くの大規模洋上風力発電所が建設されており、日本もそれに追随する形といえる。しかし日本では、台風に伴う暴風や高波浪、地震などの自然環境条件が厳しく、欧州で蓄積されている技術をそのまま日本で利用することができないのが現状であり、日本独自の実証実験を欠かすことができない。
そんな中、漸く完成したのが今回の銚子沖における着床式洋上風力発電設備である。完成までの間には台風による暴風雨や高波浪だけでなく、東北地方太平洋沖地震で銚子沖にも津波の襲来が観測されたことから、水理実験で本基礎模型に同様の津波を作用させて安全性を確認しているという。日本独自の環境下における大きな懸案事項を経験・クリアした発電設備であり、実証実験の結果に期待が集まるところである。
洋上風力発電には、大別して二つの方式がある。一つは今回完成が発表されたものに採用されている「着床式」と呼ばれるもので、海底に直接設置する方式、もう一つは鎖などを使って着床式よりも深い海底に固定する「浮体式」と呼ばれる方式である。今回の設備は着床式であるが、元来日本は遠浅の海が少なく、浮体式による発電設備により大きな期待がかかっている。長崎県や福島県において浮体式の計画が進んでいるが、実用化されるのはいつになるのか。天候に左右されやすく課題も多い方法ではあるが、太陽光発電への比重が過度にならないためにも、洋上風力発電への取り組みがより活発化することを期待したい。(編集担当:井畑学)