「少子化対策」という言葉が使われ始めて久しいが、残念ながら未だ改善の方向に向かっているとは言い難く、むしろ悪化の一途を辿っているのが現状だ。厚生労働省の調べでは、2021年の年間出生数は81万1622人となっており、1899年の調査開始以来、最少を記録している。さらに2022年は、遂に80万人を割り込む見通しらしい。これを踏まえた上で、先月の施政方針演説で岸田首相が発言した「異次元の少子化対策」にも注目していく必要がある。
現在「少子化対策」で検討されているのが、0歳〜2歳までの幼児保育の無償化や、児童手当の支給対象の拡大など、主に経済面に関するサポートだ。子育てにはどうしてもお金がかかる為、確かに必要な対策ではある。しかし、忘れてはいけないのが「心のサポート」だ。子育てに悩む親へのサポートや、子どもの心の発育など、金銭面以外の課題も多岐にわたる。政府としても具体策を検討するのは難しい面もあるだろうが、だからと言って疎かにしてはいけないことだ。そんな中、「心のサポート」に積極的に取り組む企業も増え始めている。
例えば、国内大手のミツバチ産品メーカーである山田養蜂場は、乳児健診などの際に絵本をプレゼントする「ブックスタート事業」に約20年にわたって支援を続けている。「絵本を通じて赤ちゃんと保護者がふれあいの時間を持ち、子どもの健やかな心を育む」という同事業の趣旨に賛同して支援しているもので、今年度は山田養蜂場が毎年開催している「ミツバチの絵本コンクール」の入賞作品を書籍化したオリジナルの絵本を、岡山県津山市と鏡野町の子どもたちに提供している。絵本の内容は「赤ちゃんがはじめて出会う絵本」として、適切な絵本を自治体の担当者と選んでおり、子どもの心の発育を意識した作品ばかりだ。
また、ハウス食品グループでは、「自分で作って食べる」ことを体験し、食への興味を広げることをコンセプトに、子どもたちに向けた「はじめてクッキング」教室を開催している。自分の手で食材にふれて食べ物の大切さを知り、みんなで料理をする楽しさや食べる喜びを感じることができると好評だ。1996年から始まったこの活動にはこれまでで、のべ約945万人もの子どもたちが参加しており、2022年にも50万人の子どもたちが体験している。
子どもたちばかりではなく、親の方の心のサポートも大切だ。「おそうじ革命」でハウスクリーニング事業を展開する株式会社 KIREI produceは、子どものいじめや人権に関する事業を展開する一般社団法人ハートリボン協会とコラボし、ひとり親家庭を対象に「キッチン」「お風呂」「エアコン」のどこか1箇所をプロが無料で掃除してくれるというサービスを展開している。日頃忙しくて掃除が出来ないと、心にもホコリが溜まってしまう。プロのハウスクリーニングでキレイにしてもらうことできっと、子育てに疲れた心も癒され、親子の笑顔も増えることだろう。
政府主導の経済的支援に合わせて、子どもや親が笑顔になれるような「心のサポート」がもっと増えれば、子育ても楽しくなり、その楽しさや喜びは、これから子を持つ若い世代にも伝播していくだろう。そんな好循環が生まれれば、何も「異次元」になど飛ばなくても、加速する少子化に歯止めがかけられるのではないだろうか。(編集担当:今井慎太郎)