発想の転換点。「V2H」が指し示す明るい未来

2023年02月26日 10:36

EVから電力供給可能な災害時支援施設

政府も、今年に入り、2050年の温暖化ガス排出の実質ゼロをめざすGX(グリーントランスフォーメーション)基本方針と関連法案を閣議決定した

 電気料金の高騰が話題に上ることが多い昨今、脱炭素のことなんか考えている場合ではないという声も上がっているが、世界的にはそうでもないようだ。ブルームバーグNEFによれば、2022年世界の脱炭素関連投資は約145兆円に上った。内訳は中国が約72兆円、EUが約24兆円、アメリカが約19兆円。そんな中、日本は約3兆円。残念ながら、先進国の中で大きく引き離されている形だ。

 遅れをとるまいと政府も、今年に入り、2050年の温暖化ガス排出の実質ゼロをめざすGX(グリーントランスフォーメーション)基本方針と関連法案を閣議決定した。原子力発電所の建て替えを明記し、原発や再生可能エネルギーに充てる新たな国債を発行する。そして民間資金と合わせ、10年で150兆円超を投じる方針だ。ただ、自然災害の多い日本の原発には、いささか不安が残るのも事実だ。原発や化石燃料に頼らず、電力の安定供給が保たれる仕組み作りが急務だ。

 そこで注目を集めているのが、「V2H」、まさに「車(Vehicle)から家(Home)へ」という考え方だ。今まで一般的だったのは、電気自動車に自宅のコンセントから充電する方法だった。そこに家庭用充電スタンドの登場したことで、家から車に充電するだけではなく、車から家に給電できるようになったのだ。さらに太陽光発電や蓄電機能も組み合わせることで、自宅の電力を全て再生可能エネルギーで賄うことが可能だ。電気の変換技術や蓄電池、充電器の性能向上など、技術の進化が「V2H」を実現している。

 V2Hから派生した、新たな試みも出てきている。木造注文住宅を手がける株式会社アキュラホームが、二俣川展示場(神奈川県横浜市)、かしわ沼南展示場(千葉県柏市)などの住宅展示場で、日産自動車と災害連携協定を締結し、「災害時支援施設」として展開している。自社の住宅展示場に電気自動車を常駐させることで、大容量蓄電池の役割を担い、災害時の備蓄品の提供や災害情報の発信など、いざという時に地域貢献できる拠点として注目されている。アキュラホームグループは日頃、実物大耐震実験や、日本初の耐風公開実験を行うなど、災害に強い住まいづくりに取り組む同社ならではの取り組みと言えるだろう。

 地球温暖化は世界規模の問題だ。ただ、言葉通りに「世界規模」として考えてしまうと、自分とは遠い問題と捉えてしまいがちだ。個人の生活が過ごしやすくなり、豊かになることが、結果的に脱炭素や地球温暖化の防止に繋がっていた、というのが理想的だ。「V2H」の考え方こそが、脱炭素社会に向けて加速するためのヒントなのかも知れない。 (編集担当:今井慎太郎)