材料・発電設備市場の衰退で高まる太陽光発電事業への参入リスク

2013年03月01日 10:22

 日本ではメガソーラー発電所が建設ラッシュとなっている一方、長引く欧州債務危機等により需要が伸び悩む中、太陽電池市場は、中国メーカー等の設備増強により大幅な供給過剰状態にある。これに伴い、太陽電池の材料についても世界的な供給過剰が続いており、改善する見通しが立っていない状況にある。

 こうした中、JNC、JX日鉱日石金属及び東邦チタニウム<5727>の3社が共同で設立し、独自の亜鉛還元法(JSS法)による太陽光発電用途ポリシリコンの事業化に取り組んでいた新日本ソーラーシリコンが、事業撤退を発表した。品質及び量産技術の確立に取り組み、一定の目処が立ったものの、事業の継続は困難と判断。鹿島工場撤退後、解散、清算するとのこと。

 この撤退に伴い東邦チタニウムは、平成25年3月期決算において、連結で28億円の特別損失を計上。当期の業績予想も、当期純利益を7億円のプラスから24億円のマイナスへと下方修正している。

  一方JNCは同日、子会社である千葉ファインケミカルを主体として太陽光発電事業を開始すると発表。 発電能力は一般家庭 約3200戸分となる約11MWで、31億円を投資するという。

 再生可能エネルギーに対する社会的要請が高まりつつある中、一方で「太陽光による電力はその重要性を増している」と言いながら、他方ではその材料・発電設備市場が成り立たなくなっていることを如実に表している。材料・発電設備市場が成り立たず撤退が相次げば、部品交換や保守・メンテナンスが必要な場合にそれを受けられない可能性が高まっているということである。固定買取制度による買取期間は10年から20年である。多くの企業が、20年間は十分な保守・メンテナンスが受けられることを前提として太陽光発電事業に参入しているであろう。しかし、その保証はなくなりつつある。中国メーカーを信用しているわけでもないであろう。今の建設ラッシュ、初期投資費用の低下を歓迎している場合ではないのではないだろうか。(編集担当:井畑学)