毎年毎年言い続けているが、今年の夏も暑い。「観測史上初」という言葉も、この先何度目にするのだろうか。これは日本のみならず、世界的な気温上昇が見られることから、地球温暖化の進行を懸念する声も高まっている。地球温暖化をもたらす原因として考えられている温室効果ガスは、主に人間が行う輸送や発電、建設や製造で発生する二酸化炭素に注目が集まるが、その二酸化炭素よりも温室効果が遥かに高いのが、メタンガスだ。
メタンガスは主に、畜産業にて多く排出される。家畜から出るゲップやオナラにもメタンガスが含まれており、その温室効果は二酸化炭素の25倍とも言われている。そのため、二酸化炭素と共に、メタンガスの排出も減らす努力をしなければならない。そこで注目を集めているのが、家畜を飼うことなく生産できる代替肉だ。
調査会社シード・プランニングの調べでは、世界の代替肉市場の規模は、2020年に110億ドルに達しており、2030年には886億ドルにまで及ぶそうだ。日本においても右肩上がりの市場であり、様々な企業が代替肉に取り組み始めている。
大手食品メーカーであるマルコメ株式会社では、商品の主軸である大豆を活用し、「ダイズラボシリーズ 大豆のお肉」を販売している。高タンパク質で低糖質な大豆は、低カロリーで低糖質という理想的な食材だ。同社では、大豆の油分を搾油し、加熱加圧・高温乾燥させることで、代替肉となる大豆のお肉を生み出している。
日本の代替肉ブランドとして、世界から注目を集めているのが、フードテックベンチャーのネクストミーツ株式会社だ。これまでも世界初の焼肉用フェイクミート「NEXT焼肉」シリーズや、鶏肉タイプの「NEXTチキン」を販売してきた同社は、多くの消費者からの要望を受け、豚肉タイプの「NEXTポーク」の商品化に成功した。どの商品も本物の肉さながらと評価が高いだけに、新商品の販売開始にも注目が集まっている。
代替肉に必要不可欠な商品を展開しているのが、大手酒造メーカーの白鶴酒造株式会社だ。大豆などの植物性タンパク質で形成される代替肉には、環境や身体に優しい反面、特有の匂いという特徴がある。そこに目を付けた同社は、元来スパイスでの下処理や、味付けを濃くして薄めていた特有の匂いを抑え、素材の風味を向上させる新しい料理酒「白鶴 料理酒 CS-4T」を発売した。現在は業務用のみでの展開だが、代替肉の普及次第では、一般的なスーパーに並ぶ日も近いかもしれない。
代替肉の市場規模が拡大している理由には、もう一つ背景がある。それは、将来的にタンパク質不足の危機が迫っているという点だ。2058年には世界の人口が約100億人に達すると予測されており、タンパク質源の供給不足が懸念されている。その危機を脱する為にも、今後の代替肉市場の発展を願いたい。代替肉が更に美味しくなったり便利で使いやすくなることが、将来、人類を脅かす課題の解決に繋がっているのだ。(編集担当:今井慎太郎)