2020年の秋以降に表面化した世界的な半導体不足。半導体は、産業機器や自動車、PCやモバイル機器、ネットワーク機器、家電など、あらゆる産業において欠かせない部品だ。これが不足して困るのは半導体を取り扱うメーカーだけではない。間接的に人々の暮らしにも影響を与え、社会全体の発展にも停滞をもたらしてしまう。
2024年に入ってから、徐々に世界的な半導体不足は収まりつつあるものの、産業機器などの電源用部品では今なお供給が需要に追いついていないのが現状だ。
特に、商用電源を整流・制御して安定した直流の電源を取り出す機能を持つAC-DCコンバータの動作制御に用いられるAC-DCコントローラICは、取り扱っているメーカー自体が少ないこともあり、半導体逼迫の状態が慢性化しているといわれている。
ローム株式会社は、現在の半導体供給不足による顧客のニーズに応えるため、8月に産業機器電源に最適なSOPパッケージ汎用AC-DCコントローラICの新製品4種を発表している。新製品はいずれも、産業機器アプリケーションで需要が多いパッケージと性能などの要件を満たしたPWM制御方式FET外付けタイプの汎用AC-DCコントローラICで、高精度な低電圧誤動作防止機能を搭載。Si-MOSFETからIGBT、SiC MOSFETまでの幅広いパワートランジスタに対応可能なラインアップとなっている。また、産業機器アプリケーションの電源部に多く使用されている汎用品とピン配列が同等のため、回路変更や新規設計時の工数削減に貢献する上、全機種とも、電圧ヒステリシスを持つ自己復帰型の低電圧誤動作防止機能(UVLO)に対応しており、高精度な復帰スタートを実現し、アプリケーションの信頼性を向上させる。同社では今後、高耐圧MOSFETやGaNデバイス対応の製品も順次ラインアップに追加するとしている。
日本では、ロームをはじめ、村田製作所、サンケンなどがAC-DCコントローラICを製造しており、それぞれの強みを活かして多様なニーズに応える製品を提供している。
一般的に、小口の顧客は供給不足が生じると、どうしても交渉力が弱くなってしまい、購入量が制限されたり、条件が悪くなってしまったりする可能性がある。最近は、オンラインで取引を行うブローカーも多数存在しているので、入手困難な部品を調達するために利用する業者も多いようだが、中には無許可であったり、低品質の製品を手配する悪徳ブローカーも多いようなので注意が必要だ。いくら半導体が不足しているからといって、粗悪な製品を利用して自社商品を世に送り出しては元も子もなくなる。産業機器でも自動車でも家電でも、日本製の一番の強みは、今も昔も「信頼性」だ。
半導体メーカー側も、小口顧客のニーズに対応できるよう、インターネット商社等の代理販売を利用して間口を広げている。上記に挙げた信頼できる日本メーカーでも、オンラインでの販売を行っているほか、技術サポートとしてロームなどは有人チャット機能のあるエンジニア交流サイトを開設しているようだ。商社での購入を検討してはいるものの技術的な課題や懸念がある場合など、まずは相談してみてはいかがだろうか。(編集担当:今井慎太郎)