身のまわりをぐるりと見渡してみると、いつの間にか「充電」を必要とする機器で溢れていることに気付く。スマートフォンやノートパソコン、タブレットなどをはじめ、ポータブルな電化製品の多くが「充電式」になりつつある。ますます便利になる一方、部屋の中には充電器とそのコードがどんどん増殖していく。家に帰れば、まずは充電。充電が追い付かず、充電器の順番待ちをしている機器も多い。
グローバル市場調査会社のStratistics MRC社によると、モバイル充電器の世界市場は2024年に390億米ドルを占め、2030年には634億米ドルにまで達する見込みだという。今後も需要の拡大が予測される中、市場で求められているのは、より高出力で高効率な「速くて、小さい」充電器だ。
そんな中、今年10月に幕張メッセで開催された「CEATEC 2024」の会場で、来場者から高い関心を集めていたのが、台湾のデルタ電子(Delta Electronics, Inc. 以下、デルタ)だ。電源管理や熱対策のグローバルリーダーとして知られるデルタは、「CEATEC 2024」のブースにおいて、Eコマースで発売を予定している、高速充電対応のUSBタイプC充電器「Innergie(イナジー) C10 Duo」を展示。日本での新発売に伴う説明会を開催した。Innergieはデルタの一般向け電力ソリューションブランドで、C10 Duoは、その「One For All」シリーズの最新フラグシップ製品に位置付けられる。
C10 Duoの最大の特長は、100Wの高出力で、電力効率が最大92・62%という、その圧倒的な充電効率にある。例えば「MacBook Pro M2」など96Wクラスのハイレベルデバイスでも、性能テストでは充電切れの状態からわずか30分で50%まで充電できたというから驚きだ。USBタイプCの充電ポートを2つ備えたデュアルポート式で、両方のポートを使用する際には接続したデバイスの要件に応じて電力配分を最適化してくれる。また、独自の回路設計と構造により、既存品に比べて37%もの小型化にも成功。まさに、今、市場が欲している「速くて、小さい」充電器だ。
そんなC10 Duoの高効率と小型化の実現を可能にしたのが、ロームのGaNデバイスEcoGaN™だ。ロームではGaN(ガリウムナイトライド/窒化ガリウム)を搭載したデバイスをEcoGaN™というブランドで展開。高いポテンシャルを持ちながら取り扱いが難しいGaNの「使いこなし」に注目した製品開発やソリューションの提供を進めている。デルタグループとは2022年に電源システム用パワーデバイスの戦略的パートナーシップを締結して以来、技術交流を続けており、これまでにもローム製のパワーデバイスがInnergieの新製品をサポートしている。今回発売されるInnergie C10 Duoの製品パッケージにもロームとEcoGaN(TM)のロゴ入りステッカーが貼られ、ロームとの共創を前面に押し出しており、デルタは日本で発売する製品には今後もローム製品を積極的に採用することを表明している。
Innergie C10 Duoの価格は10,000円前後と、モバイル充電器にしては少しお高めだが、性能を考えると値段には代えがたい大きなメリットがある。また、それぞれの業界を代表するデルタとロームによるブランドの信頼性も高い。GaNデバイス搭載のモバイル充電器はまだまだハイクラスで、プロユースのイメージが強いが、このInnergie C10 Duoの登場により、近い将来、一般向けにも広く浸透していくのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)