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武田薬品工業の2026年3月期決算は、売上収益が4兆5,057億円と前期比1.7%の減収となった一方、営業利益は同19.3%増の4,088億円となりました。米国で主力薬「ビバンセ」の後発品浸透によりニューロサイエンス領域が落ち込みましたが、エンタイビオや免疫グロブリン製剤、QDENGAといった成長製品群が収益を押し上げました。次期は売上増を見込む一方、構造再編費用や税負担の増加により、親会社所有者帰属利益1,660億円への減益を計画しています。
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武田薬品工業が公表した2026年3月期連結決算(IFRS)は、売上収益が4兆5,057億円(前期比1.7%減)、営業利益が4,088億円(同19.3%増)、親会社所有者帰属利益は1,918億円(同77.7%増)となりました。非中核要因を除いたCore営業利益も1兆1,725億円と0.8%の増益を維持。米国でのパテントクリフ(特許の崖)による影響を、コスト管理と製品ポートフォリオの転換で吸収しました。
減収の主因は、米国におけるADHD治療剤「VYVANSE(ビバンセ)」の後発品参入です。これによりニューロサイエンス領域の売上は4,143億円(前期比26.8%減)と大幅に減少しました。しかし、他の領域は堅調です。消化器系疾患では、潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンタイビオ」(ENTYVIO)の皮下注射製剤が欧米で拡大し、1兆4,075億円(同3.7%増)に成長。血漿分画製剤も免疫グロブリン製剤の需要増で1兆575億円(同2.4%増)と1兆円超の売上規模を維持しました。さらにデング熱ワクチン「QDENGA」が成長新興国で伸びるなど、次世代の収益源として存在感を高めています。
利益面では、販売体制の効率化で販管費が絞られたうえ、前期に膨らんでいた事業構造再編費用が一巡したことも、営業利益を押し上げました。研究開発費は6,759億円(同7.4%減)となりましたが、これは一部の開発中止や進捗によるもので、ザソシチニブなどの後期開発品への投資は継続・拡大しています。一方で、細胞療法研究の中止に伴い582億円の減損を計上するなど、パイプラインの厳選も進めています。
財務面では、円安の影響でのれんや有形固定資産が増加し、総資産は15兆4,531億円となりました。親会社所有者帰属持分比率は50.3%と健全な水準を維持しています。株主還元については、当期の年間配当を200円とし、次期は204円への増配を予定する累進配当方針を継続しました。
2027年3月期の通期予想は、売上収益4兆6,400億円、営業利益4,200億円を計画しています。新薬の投入や主力品の伸長を前提に売上は増加を見込む一方で、研究開発費の積み増しに加え、トランスフォーメーション・プログラム関連の構造再編費用(約1,700億円)や税負担の増加が重く、親会社所有者帰属利益は1,660億円と減益の計画です。
製薬大手各社が直面する特許切れ問題に対し、武田は、中計で掲げる「Horizon 1(変革フェーズ)」から「Horizon 2(成長加速フェーズ)」への移行を打ち出しています。既存薬の成熟化を、oveporexton(睡眠障害治療薬候補)などの強力な後期パイプラインの上市によっていかに乗り越え、持続的な成長軌道に戻せるかが、今後の焦点となります。 (編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













