KDDIと楽天モバイルが共同開発する次世代通信インフラの概念図。仮想化基地局(vRAN)やAI制御、水冷・液浸冷却技術などを活用し、データセンターと通信網の省電力化を目指す。(出所:KDDI・楽天モバイル)
今回のニュースのポイント
KDDIと楽天モバイルは、NEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」に採択され、仮想化基地局と計算基盤の省電力化技術開発を開始します。AI普及で急増するデータセンターと通信網の電力消費を抑える狙いで、2030年度を見据え、技術条件に応じて最大約40%の消費電力削減を目指す研究開発に取り組みます。AI時代の通信インフラと環境負荷低減の両立に向けた重要な試みです。
本文
KDDIと楽天モバイルは2026年5月15日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進する「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」において、仮想化基地局と計算基盤の同時最適化技術の開発に関する提案が採択されたと発表しました。両社はこの採択を受け、AI時代の本格的な到来を見据えた次世代通信インフラの省電力化に向けた共同開発を開始します。2030年度までに、データセンター(DC)および無線アクセスネットワーク(RAN)全体での大幅な消費電力削減を目指し、通信品質の向上と環境負荷低減の両立に挑みます。
生成AIの普及に伴い、世界中でデータセンターの増設が急ピッチで進んでいます。しかし、膨大な計算処理を必要とするAIインフラは、従来のシステムと比較して極めて大きな電力を消費することが課題となっています。この問題は単なる運用コストに留まらず、電力網全体の需給バランスやカーボンニュートラルの達成にも直結する課題へと発展しています。通信大手であるKDDIと楽天モバイルが技術開発で連携する背景には、AIと通信が不可分となったインフラ環境における、通信会社の役割の変化があります。
今回の研究開発の核心は、仮想化基地局(vRAN)と計算基盤の同時最適化です。従来の通信網は専用ハードウェアに依存していましたが、ソフトウェアで制御する仮想化技術への移行が進んでいます。両社はこの仮想化環境を活用し、通信トラフィックと計算負荷をAIでリアルタイムに最適制御する仕組みを構築します。KDDIが持つ大規模データセンターの運用知見と、楽天モバイルが推進する仮想化モバイルネットワークの技術を融合させ、インフラ全体の効率を高める狙いです。
具体的な技術開発項目の一つに、GPUクラスタ間ネットワークの光化があります。データセンター内での膨大なデータ転送において、電気処理を介さない光通信技術を導入することで、処理過程での電力消費を抑制します。また、AIを用いて基地局の電波送信をトラフィック状況に応じてリアルタイムに制御する技術も開発します。これにより、利用者が少ない時間帯の無駄な電力を削ぎ落としながら、必要な時には高品質な通信を提供する環境を整備します。
さらに、将来的なAI向けGPUの高発熱化問題にも踏み込みます。AI学習に用いられる計算基盤は将来的に極めて高い発熱が想定されており、従来の空冷技術では限界を迎える可能性があります。そこで、研究開発では最先端の水冷技術や、機器全体を特殊な液体に浸す液浸冷却技術の確立を目指します。AI時代において、インフラ運営の成否は計算能力だけでなく、いかに効率的に熱を逃がすかという「冷却能力」に左右されるようになっています。冷却に伴う電力消費を削減することは、データセンターの安定した演算環境の維持に不可欠な要素です。
また、IoTデバイスの普及による通信トラフィック増大への対策として、映像圧縮技術やエッジAIの活用も研究対象に含まれています。端末側で高度な処理を行い、送信するデータ量を削減することで、通信網全体の負荷を下げ、システム全体の省電力化を促進します。さらに、Open RAN(オープンラン)化に伴うセキュリティリスクにも対応し、低消費電力と強固なサイバー対策を両立するセキュアな演算環境の整備も進めます。
政府はAI、通信、半導体を経済安全保障の重要領域と位置づけており、NEDOによる支援はその国家戦略の一環です。AIインフラは今や一企業の競争力を超え、国家全体の産業競争力を左右する基盤となっています。通信会社はAIとデータを支える社会インフラ運営企業として、その重要性を増しています。AIによる利便性と、持続可能な電力消費をいかに両立させるか。KDDIと楽天モバイルによるこの共同プロジェクトは、日本のデジタル社会が持続的な成長を遂げるための重要な試みとなります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













