GMOのAI転換が映す産業構造変化 「広告」から「業務基盤」へ

2026年05月15日 13:08

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AI活用の拡大に伴い、企業は広告依存型から業務基盤型収益モデルへの転換を進めている(イメージ)

今回のニュースのポイント

GMO TECHホールディングスは、広告・メディア中心の事業構造からAI SaaS型へ転換すると発表しました。背景には生成AI普及による検索行動や広告市場の変化があります。世界ではMicrosoftやSalesforceなどが既存業務へのAI統合を進めており、日本でも通信、金融、製造など既存産業のAI化が本格化し始めています。

本文
 GMO TECHホールディングスは2026年5月14日、これまでの広告・メディアを中心とした事業構造から、AIを活用したSaaS(Software as a Service)事業へと重点を移行する方針を決定したと発表しました 。今回の転換は、生成AIの急速な普及による市場環境の変化を見据えたものであり 、国内のデジタル産業構造が転換点を迎えていることを示唆しています。

 事業方針転換の背景として同社が挙げたのは、生成AIの進化に伴うユーザーの検索行動の変化です 。これまでは検索エンジンを通じて情報を探し、広告をクリックしてサイトへ流入するというモデルが一般的でしたが、生成AIはユーザーの問いに対して回答を直接提示します。こうした情報提示の高度化により、従来のインターネット広告やメディアが担ってきた役割が変化しており、広告運用を中心としたフロービジネスは外部環境の変化を受けやすい構造となっています。同社は持続的な成長に向け「基盤型SaaS」への転換が必要であると判断しました。企業によるAI活用は、アクセス獲得を中心としたモデルから、業務フローに深く組み込まれるAI活用へと重心が移りつつあります。

 この動きは、世界的なソフトウェア企業が進める「業務AI化」の流れと方向性を共有しています。米国ではMicrosoftが「Copilot」をOfficeスイートに統合し、SalesforceはCRM(顧客関係管理)とAIを融合させることで、業務データとAIの一体化を進めています。Adobeは制作ツールへ生成AIを標準搭載し、OracleやSAPといったERP(企業資源計画)ベンダーも、既存の業務システムそのものをAI化する動きを加速させています。これらの共通点は、AIを単独の機能として提供するのではなく、顧客が日々利用する既存業務の基盤に埋め込んでいる点です。企業の保有する業務データとAIがいかにシームレスに接続され、業務効率を向上させるかという、企業の業務基盤を巡る競争が本格化しています。

 日本国内においても、こうした既存産業のAI化はIT業界の枠を超え、産業インフラ全体へと波及しています。通信分野では、KDDIが楽天モバイルと協力し、AI時代の到来を見据えた省電力通信基盤の研究開発を推進しています。生成AIの普及はデータセンターの消費電力を増大させるため、通信網と計算基盤の効率化は、重要なインフラ課題となっています。また、ソフトバンクもAIインフラへの投資を大幅に拡大しており、国内外でデータセンターと電力投資を加速させています。

 製造業や物流、医療といった分野でも、AIを経営基盤に位置づける動きが顕著です。日立製作所は「Lumada」を軸に産業DXを展開し、現場データとAIを組み合わせて生産性を向上させています。リコーは業務DX支援を強化し、富士フイルムは画像診断などの医療AI領域を拡大しています。さらに、地方銀行もAIを活用した中小企業支援やDXコンサルティングに動き始めており、AIはあらゆる産業の基盤技術として位置づけられ始めています。

 AI時代において重要となるのは、良質なデータを継続的に保有し、それを実務に即して運用できる環境です。今回のGMO TECHホールディングスの決断は、AIによって情報の接点が変化する中で、より深く企業の業務プロセスそのものを支援する収益構造への移行を目指したものです 。企業は単発のサービス提供から、業務の中核を支えるインフラ的な役割へと移行することが求められています。

 今後は、ソフトウェアの進化だけでなく、それを支える電力、通信、半導体、データセンターといった物理的インフラとAIが一体のテーマとして扱われる場面が増えるでしょう。クラウド市場の拡大も追い風となり、日本企業もAIを単なる効率化ツールではなく、経営基盤として再定義し始めています。AI競争は今、単なるツール開発のステージを終え、産業競争力や産業構造にも影響を与える新たなフェーズへと突入しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)