今回のニュースのポイント
経済同友会が7日発表した景気定点観測アンケート調査で、回答した経営者らの67.0%がAIを「1日に何度も利用している」と答え、社内で一定以上の効果が出ているとの回答も約8割に達しました。しかし、具体的な効果・今後期待する効果では「資料作成等の業務スピード向上」が84.7%と突出する一方、「新事業の創出」は12.9%、「高付加価値業務への人員配置換え」は7.4%にとどまりました。AI活用が既存業務の効率化に集中する中、企業価値を高めるために「業務プロセスそのものをAI前提で抜本的に再設計する」を必要な取り組みとして挙げた回答が53.1%で最多となっており、導入率の競い合いから企業変革へのフェーズ移行が問われています。
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AI(人工知能)は企業経営の現場において、すでに「特別なツール」ではなくなりつつあります。経済同友会が7日に公表した第157回景気定点観測アンケート調査(7月21〜31日実施、全体の回答者数210人。AI利用頻度の設問は206人が回答)によると、回答した経営者らの67.0%が日常業務でAIを「1日に何度も利用している」と回答しました。「1日1回程度(14.1%)」や「週に数回程度(13.1%)」を合わせると、週に数回以上利用する層は94.2%に達し、「ほとんど、または全く利用していない」は2.4%にとどまりました。なお、本調査の対象は経済同友会の正副代表幹事や幹事、各地経済同友会の代表幹事らであり、一般企業全般の平均値ではありませんが、今回の調査対象となったトップマネジメント層では、AIの日常利用が広く浸透している実態がうかがえます。
個人での活用にとどまらず、企業組織としての導入効果についても前向きな結果が示されています。社内でのAI利用による効果について「大きな効果が出ている」が13.0%、「一定の効果が出ている」が66.7%となり、合わせて79.7%の経営者が効果を実感していると答えました。「限定的な効果にとどまる」は17.9%、「目立った効果はみられない」は2.4%でした。経営トップ層でAI利用が広がり、社内でのAI利用についても約8割が一定以上の効果を認識しているという点では、今回の調査対象ではAI普及の第一段階がかなり進んでいることがうかがえます。
しかし、その「効果の中身」に目を向けると、様相は一変します。AI利用による具体的な効果(「目立った効果はみられない」とした場合は今後期待する効果、2つまで選択)を見ると、最も多かったのは「資料作成・調査・翻訳などの業務スピード向上」で84.7%と他を圧倒しました。一方で、「オペレーションの大幅な変革」は39.6%、「経営判断のスピード向上」は27.2%、「専門人材不足の補完」は17.3%にとどまっています。さらに、「新製品・新サービス・新規事業や新たなビジネスモデルの創出」は12.9%、「高付加価値業務への人員の配置換え」は7.4%という低い水準にとどまりました。現在の企業におけるAI活用は「今ある仕事を速くこなす」効果が突出しており、仕事の進め方そのものを変えたり、新しい稼ぎ方を生み出したりする効果は、業務効率化ほど広がっていないことがうかがえます。
資料作成や調査がどれほど高速化しても、そこで浮いた時間が従来の業務の延長線上で消費されるだけでは、企業全体の付加価値や稼ぐ力を根本から高めることはできません。特に「高付加価値業務への人員の配置換え」が7.4%にとどまっている事実は、AI導入による時間の創出が、高付加価値業務への人員再配置にまで広く結びついている段階ではないことを示しています。効率化によって生まれた余力を、いかに成長分野や新たな付加価値創出へ振り向けられるかが、日本企業の生産性を左右する大きな分岐点となります。
こうした状況を踏まえ、経営者が今後必要と考える取り組みにも変化の方向性が表れています。AIを活用して自社の企業価値を高めていくうえで今後必要な取り組みを尋ねたところ、「業務プロセスそのものをAI前提で抜本的に再設計する」が53.1%で最多となりました。次いで「経営トップ主導でAI活用の方針・戦略を明確に打ち出す(36.2%)」、「AIの学習に資するよう社内データの整備・共有基盤を構築する(34.8%)」が続いています。社員にAIツールを配布して個々の業務効率化を期待するフェーズから、AIが存在することを前提として業務フローや組織の構造そのものを組み替える段階へ進むべきだという認識が、経営層の間で広がりつつあります。
生成AIの登場初期において企業間の差を生んでいたのは「AIを導入しているかどうか」という利用の有無でした。しかし、今回の調査対象では経営者らの7割近くが1日に何度もAIを利用しており、次に差を生むのは「AIで既存業務を速くするだけの企業」にとどまるか、それとも「AIを前提に業務プロセスや人員配置、ビジネスモデルまで作り直せる企業」へと進めるかだと考えられます。AI競争の焦点は、導入率の高さだけではなく、企業変革をどこまで推進できるかという実行力へ移りつつあるとみられます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













