日立、米Anthropicの重要インフラ防衛プログラムに創設パートナーとして参画 AIと制御技術でサイバー対策強化

2026年10月10日 16:55

日立イメージ

電力、鉄道、工場、水道などの重要インフラを、AIとサイバーセキュリティ技術で守るイメージ。日立製作所は米Anthropicの重要インフラ向けサイバー防衛プログラムに創設パートナーとして参画し、制御・運用技術(OT)の知見を生かした防衛力の強化を目指す。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

日立製作所は2026年10月9日、米Anthropicが10月8日(米国時間)に発足させた重要インフラ向けサイバー防衛プログラム「Critical Infrastructure Defense Program」に創設パートナーとして参画すると発表しました。同プログラムは、電力、水、製造、交通などの制御システムを対象に、Anthropicの先進AIモデル「Claude」を活用して脆弱性の迅速な検出や修復を目指す取り組みです。日立は鉄道やエネルギーなどの現場で培ったOT(制御・運用技術)の知見をワーキンググループなどで共有。2026年5月からのAnthropicとの協業関係を深め、9月に提供開始した自社のオペレーショナルレジリエンスサービス「HMAX Cyber」の高度化や制御製品のセキュリティ強化につなげる方針です。

本文
 日立製作所は10月9日、米Anthropicが10月8日(米国時間)に立ち上げた重要インフラ向けサイバー防衛プログラム「Critical Infrastructure Defense Program」に、創設パートナーとして参画すると発表しました。同プログラムは、電力、水、製造、交通といった社会や経済活動の基盤となる重要インフラの制御システムを対象としています。先端AI技術を組み込むことで、重要インフラを標的としたサイバー脅威に対する防衛力を国際的な連携のもとで高めていくことを目指す取り組みです。

 本プログラムの仕組みは、重要インフラ事業者が利用するシステムインテグレーターやセキュリティ企業の製品・サービスに対し、Anthropicの先進的なAIモデル「Claude」を活用する形をとります。AIの高度な分析機能を活用することで、システム内に潜む脆弱性を従来よりも迅速に検出し、迅速な修復や対策につなげることを狙いとしています。日立をはじめとする参加企業の専門的な知見と、AnthropicのAI技術を組み合わせ、重要インフラのサイバーセキュリティ強化を目指す取り組みです。

 重要インフラにおけるサイバーセキュリティ対策は、一般的なITシステムとは異なる特有の難しさを抱えています。電力や水道、交通などの制御システムは一度停止すると社会生活に膨大な影響を及ぼすため、システムを停止させてセキュリティ修正プログラム(パッチ)を容易に適用できません。一方で、日立はAIの進化に伴い、脆弱性が公表されてから攻撃に悪用されるまでの時間が大きく短縮していると指摘しています。このため、攻撃を受ける可能性を前提とした事業継続性や、非停止環境での迅速な脆弱性対応が強く求められています。

 こうした課題に対し、日立は鉄道やエネルギー、産業分野などの現場で長年培ってきたOT(制御・運用技術)の知見を提供することで貢献する方針です。OTとは、物理的な設備や運用の制御を司る技術であり、ITとは異なる安全確保や安定稼働のノウハウが不可欠となります。日立はプログラム内のワーキンググループなどに参加し、物理的な設備や制御システムに関する実務的な知見を共有することで、現場の実情に即した実用的なAI防衛メカニズムの構築を支えます。

 今回のプログラム参画は、日立とAnthropicが2026年を通じて段階的に深めてきた戦略的協業の延長線上に位置づけられます。両社は5月19日に「Lumada 3.0」の強化に向けた戦略的パートナーシップを締結。続いて6月5日には重要ソフトウェアの保護を目指すAIプログラム「Project Glasswing」へ参画し、7月28日には同取り組みを通じた「Claude Mythos Preview」によるセキュリティ検証プロセスの加速を発表しました。今回の参画は、これまでのAnthropicとの協業に加え、重要インフラのサイバー防衛に向けた連携を広げる取り組みとなります。

 さらに日立は、今回の取り組みで得られる知見や参加メンバーとの議論を、自社のサイバーセキュリティ事業の強化へ直接還元する計画です。具体的には、2026年9月3日に提供開始を発表した、AI時代の事業継続を支援するオペレーショナルレジリエンスサービス「HMAX Cyber」の高度化を進めます。オペレーショナルレジリエンスとは、障害や攻撃が発生しても重要な業務を継続・回復させる能力を指します。日立は「HMAX Cyber」の機能向上に加え、自社が提供する制御システムやOT製品自体のセキュリティ強化も同時に推進します。

 日立製作所のAI&ソフトウェアサービスビジネスユニットでHead of Cyber CoEを務める小岩博明氏は、AIの進化により脅威が複雑化する中、社会インフラを支えるOT領域のセキュリティ担保が最優先課題であると説明しています。現場で培った知見と先進AIの融合により、顧客先へのエンジニア派遣を含めた「HMAX Cyber」を展開し、参画企業と連携しながらインフラのサイバーレジリエンス向上に貢献する考えを示しています。

 今回の発表は、急速に進化するAI技術を重要インフラの防衛側へと迅速に組み込み、制御技術と融合させようとする日立の戦略を端的に表しています。現時点ではプログラムの発足と創設パートナーとしての参画方針が公表された段階であり、実際の脆弱性検出実績や防衛成果の具体化は今後の取り組みに委ねられます。複雑化する脅威に対し、AIとOTを組み合わせた実効性の高い防衛体制をいかに確立していけるかが、今後の社会インフラ防衛の行方を左右することになります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)