半導体放熱材、マレーシアで生産拠点新設へ PEN S Jが7000万ドル超投資、先端実装材料を強化

2026年10月08日 12:19

半導体クリーンルームイメージ

半導体関連の精密製造設備が並ぶクリーンルーム。PEN S J Electronicsはマレーシア・ペナン州に7000万米ドル超を投じ、熱界面材料(TIM)や放熱部材(IHS)を段階的に製造する新工場の建設を計画している。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

マレーシア・ペナン州の投資誘致機関であるInvestPenangは10月7日、PEN S J Electronicsが同州に先端半導体パッケージング材料の新工場を建設する計画を発表したと公表しました。同社はペナン州開発公社(PDC)と土地の賃貸借契約を締結し、7000万米ドル超を投じる計画です。新工場では、第1段階で熱界面材料(TIM)、第2段階で一体型ヒートスプレッダー(IHS)の製造へと段階的に拡大する構想となっています。AIや高性能計算(HPC)向け半導体の発熱対策を支える部材の供給体制を整備する狙いですが、着工や完成時期、具体的な生産能力などは未公表です。

本文
 PEN S J Electronicsが、マレーシア北西部のペナン州において先端半導体パッケージング材料の新工場を建設する計画を発表しました。同社は計画の推進に向け、ペナン州開発公社(PDC)との間で工場用地の土地賃貸借契約を正式に締結しました。本事業における投資予定額は7000万米ドル超に上ります。ペナン州の投資誘致機関であるInvestPenangが2026年10月7日に公表しました。今回の計画は、半導体チップそのものを製造するファブの新設ではなく、半導体の熱管理や保護を担う先端パッケージング材料および関連部材の製造拠点を整備するものです。

 新工場の整備予定地は、ペナン州の主要な産業集積地であるバトゥカワン工業団地第3区画(BKIP 3)内に位置しています。ペナン州開発公社との土地賃貸借契約の締結により、事業着手に向けた用地確保の法的手続きが一歩進んだ形となります。ただし、土地契約の締結はあくまで生産基盤を整備するための準備段階を示すものであり、工場の完成や生産活動の開始を意味するものではありません。今回の発表において、具体的な着工日や工場の竣工予定時期、ならびに本格的な量産開始の時期については明らかにされていません。

 新工場の運用は段階的に進められる計画であり、第1段階では熱界面材料(TIM)の製造ラインを立ち上げる方針です。TIMは、半導体チップと放熱部材などの接触面に生じる微細な隙間を埋め、熱を効率よく伝えるために用いられる材料です。人工知能(AI)や高性能計算(HPC)に用いられる高性能半導体では、演算処理に伴う発熱への対応が重要となり、熱管理材料が安定した動作を支える役割を担っています。TIMはチップの処理能力を直接高めるものではありませんが、発生した熱を外部へ効率的に逃がす重要な役割を担っています。

 続く第2段階では、一体型ヒートスプレッダー(IHS)の製造へと事業領域を拡張する構想が掲げられています。IHSは、半導体チップの表面を覆い、チップから生じた熱を広い面積へと拡散させて外部の冷却装置へ伝えるための金属製などの放熱部材です。TIMが接触面の熱抵抗を低減する材料であるのに対し、IHSは熱を効率的に伝播・拡散させる構造部材であり、両者を適切に組み合わせることで半導体パッケージ内部の熱管理を支えます。なお、第2段階の始動時期や追加の投資額、稼働時の生産能力などは今回公表されておらず、第1段階と同時稼働するものではありません。

 今回の発表資料では、同事業に関連するS J Electronicsが培ってきた技術基盤についても言及されています。S J Electronicsについて同発表では、高性能インジウム系熱界面材料(TIM1)を商業規模で量産できる世界でも数少ないメーカーの一つと説明されています。今回の新工場計画も、こうした半導体パッケージの熱管理に関する同グループの高度な技術ノウハウを基盤として進められています。ただし、関連企業が有する既存拠点での製造実績をマレーシア新工場での現在の生産実績として扱うことはできず、新工場で同材料の量産が直ちに始まったわけではありません。

 ペナン州は、半導体の後工程である組み立て・検査や電子機器関連のグローバル企業が多数進出している世界的な産業集積地です。同社は新拠点の整備を通じて、主要顧客に対する製品供給のリードタイム短縮や、倉庫・物流費用の削減を目指すとしています。今回の計画は、地域内に先端パッケージング向けの材料・部材供給機能を付け加える動きとして位置づけられます。投資誘致機関のInvestPenangはエコシステム強化への期待を示していますが、特定企業への納入契約の確定などについては触れられていません。

 PEN S J Electronicsは土地賃貸借契約を締結し、新工場を2段階で整備する計画を示しています。まずTIMの製造から着手し、将来的にはIHSへと段階的に生産体制を拡大させる見通しとなっています。一方で、現時点では工場の具体的な稼働開始時期をはじめ、年間の生産能力、現地での新規雇用人数、および各段階における詳細な工程表などは公表されていません。今回の発表は、7000万米ドル超の投資計画のもと、半導体の放熱材料および部材を段階的に製造する拠点を新設するという確定事実を提示するものとなります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)