金融機関もAI時代へ 9割超が生成AI導入・試行 日銀「コア業務へ活用拡大」

2026年08月06日 12:43

画・2021年度賃上げ、3社に2社で実施。製造業は大・中小とも7割超。ベア実施は3割未満。

国内金融機関で生成AIの導入・試行が急速に拡大しています。日本銀行の調査では9割超の金融機関が生成AIを導入または試行しており、活用は議事録作成などの事務業務から融資や営業支援などコア業務へと広がっています。(資料写真)

今回のニュースのポイント

日本銀行が6日に公表したリポートによると、国内金融機関の9割超が生成AI(人工知能)を導入または試行していることが分かりました。生成AIの活用は議事録作成や文書要約などの汎用的な事務作業から、融資稟議書の作成や営業支援、与信審査といったコア業務へと急速に広がりを見せています。日銀は、今後は自律型タスク処理を行う「AIエージェント」や最先端の「フロンティアAI」の活用も視野に、金融DXと適切なリスクガバナンスの両立が一段と重要になると指摘しています。

本文
 日本銀行が6日公表した「金融システムレポート別冊」によると、国内金融機関における生成AI(人工知能)の導入および試行の割合が9割を超えたことが明らかになりました。調査を開始した2024年度には「利用・試行をしていない」機関が4割以上を占めていましたが、この2年間で生成AIの導入・試行が急速に広がり、9割超の金融機関で導入または試行されるようになりました。金融業界においても本格的な「AI時代」が到来しており、従来の事務補助にとどまらない業務改革が加速しています。

 日銀が取引先金融機関150先を対象に実施したアンケート調査によると、現在生成AIを「利用中」と答えた機関は79.3%に達し、「試行中」(11.3%)を合わせると全体の90.6%に上ります。業態別に見ると、大手行ではすべての先で導入・試行が進んでいるほか、地方銀行や第二地方銀行、信用金庫など地域金融機関への広がりも著しく、特に第二地方銀行ではこの1年間で利用率が急増しました。推進体制としては、特定のIT・DX部門が主導するケースが約7割を占める一方、経営直下に全社を統括する専門組織を置く金融機関も約2割存在しています。

 活用の現場においても大きな変化が見られます。初期段階では議事録の文字起こしや文書要約、社内規程の検索といった一般的な汎用事務処理が中心でした。しかし現在では、融資稟議書の作成支援や顧客ニーズに応じた営業提案、マーケティング、さらには与信審査やシステム開発・運用管理といった金融機関の「コア業務」への活用が広がりを見せています。また、顧客情報を扱う業務など機密性の高い分野での生成AI活用(レポートでの「広範活用先」)も利用機関全体の約5割に達しています。

 一方で、AIの出力をそのまま顧客に直接提示するチャットボット等の運用については、多くの金融機関が依然として慎重な姿勢を維持しています。AI特有の誤情報(ハルシネーション)や不確実性を考慮し、最終的な判断プロセスには必ず「Human-in-the-loop(人による最終確認)」を取り入れるなど、厳格な運用ルールのもとでコア業務の効率化を図っています。

 AI活用の高度化に伴い、リスク管理やガバナンスのあり方も重要な課題となっています。情報漏洩対策や基本的なガイドラインの整備は一定程度進んでいるものの、AIへの不正な入力による攻撃(プロンプトインジェクション)をはじめとするサイバー攻撃対策、サードパーティリスク管理、AI特有のリスクを審査できる専門人材の育成などについては、多くの機関が「今後の改善課題」として認識しています。

 日銀は、3年後には単なる業務支援ツールとしての利用を超えて、生成AIを自社の「業務プロセスそのものへ統合」することを想定する金融機関が増加すると分析しています。今後は、自律的に複雑なタスクを処理する「AIエージェント」や、最先端の性能を持つ「フロンティアAI」の導入が進むことが見込まれます。日銀は、金融機関の経営陣が新技術の便益とリスクを正しく理解したうえで適切なガバナンスを発揮し、安全な業務運営と革新的な金融DXを両立させていくことが不可欠であると指摘しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)